万葉集巻54‐56番歌(巨勢山のつらつら椿)~アルケーを知りたい(1254)

▼701年に持統上皇が紀伊国(和歌山県)に行幸したとき、同行した貴族たちの歌。54番の巨勢山(こせやま)は奈良県御所市にある山。椿がたくさんあるのだろう。9月は花の季節ではないので、春になって椿の花がつらつらと咲いているところをつらつらと見る場面を想像しましょうと詠っている。つらつらという言葉が印象的な歌。55番の真土山(まつちやま)大和国と紀伊国の境にある山。

 大宝元年辛丑の秋の九月に、太上天皇、紀伊の国に幸す時の歌
巨勢山のつらつら椿つらつらに 見つつ偲はな巨勢の春野を 万54
*巨勢山の椿が連なって咲いています。つらつらと見ながら巨勢の春の野を偲びましょう。
 右の一首は坂門人足。

あさもよし紀伊人羨しも真土山 行き来と見らむ紀伊人羨しも 万55
*紀伊の人が羨ましいことです。なぜなら、紀伊の人はこの土地を往ったり来たりするときいつも真土山を眺められるからです。
 右の一首は調首淡海

 或本の歌
川の上つらつら椿つらつらに 見れども飽かず巨勢の春野は 万56
*川の上に連なって咲いている椿たちを、つらつら見てるんだけど飽かないなあ。巨勢の春野は。
 右の一首は春日蔵首老。

【似顔絵サロン】調 淡海 つき の おうみ 650年 - 730年 飛鳥時代~奈良時代の貴族。672年の壬申の乱で大海人皇子に従った舎人の一人。















〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集一』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=1

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