万葉集巻78‐80番歌(飛ぶ鳥明日香の里を置きて去なば)~アルケーを知りたい(1259)

▼710年、元明天皇が藤原から奈良へ宮を遷したときの歌。78番歌からは、元明天皇の藤原の宮への心残りの気持ちが伝わる。これに対し79番と80番で、我われスタッフが新しい都でもお支えします、と天皇の心細さの払拭に努めている。

 和銅三年庚戌の春の二月に、藤原の宮より寧楽の宮に遷る時に、御輿を長屋の原に停め、故郷を廻望て作らす歌<一書には「太上天皇の御製」といふ>
飛ぶ鳥明日香の里を置きて去なば 君があたりは見えずかもあらむ<一には「君があたりを見すてかもあらむ」といふ> 万78
*鳥が明日香の里から飛び立ち去ると、君のいらっしゃるあたりは見えなくなるのでしょう。

 或る本、藤原の京より寧楽の宮に遷る時の歌
大君の 命畏み 
親びにし 家を置き 
こもりくの 泊瀬の川に 
舟浮けて 我が行く川の 
川隈の 八十隈おちず 
万たび かへり見しつつ 
玉桙の 道行き暮らし 
あをによし 奈良の都の 
佐保川に い行き至りて 
我が寝たる 衣の上ゆ 
朝月夜 さやかに見れば 
栲のほに 夜の霜降り 
岩床と 川の氷凝り 
寒き夜を 休むことなく 
通ひつつ 作れる家に 
千代までに いませ大君よ 
我も通はむ 万79
*これから先もずっと末永く(奈良の都に)お住みください、大君よ。私どもも通います。

 反歌
あをによし奈良の家には万代に 我も通はむ忘ると思ふな 万80
 右の歌は、作主未詳。
*奈良のお屋敷にはこれから先ずっと我われは通います。我われが忘れるとは思いませんように。
 
【似顔絵サロン】元明天皇 げんめいてんのう 661年 - 721年 第43代天皇。天智天皇の第四皇女子。草壁皇子の妃。文武天皇の母親。














〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集一』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=1

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