万葉集巻第三263、265、267番歌(馬ないたく打ちそな)~アルケーを知りたい(1275)

▼263番は、分かりにくい言い回しが特徴の歌。最初は、は?、と思う。言いたいのは、志賀の風景はじっくり時間をかけて見たいので、馬を急がせる必要はない、だろう。でもストレートにそう言うより「日ならべて見ても我が行く志賀にあらなくに」と表現したほうが注意を引く。後の265番と267番は、とても分かりやすい。

 近江の国より上り来る時に、刑部垂麻呂が作る歌一首
馬ないたく打ちそな行きそ日ならべて見ても 我が行く志賀にあらなくに 万263
*馬に鞭してそんなに急がせなくてよろしい。ここ志賀の風景は何日もかけて見たいほどだから。

 長忌意吉麻呂が歌一首
苦しくも降り来る雨か三輪の崎 狭野の渡りに家もあらなくに 万265
*タイミングの悪いときに降る雨だね。三輪崎、狭野の渡し場には雨宿りできる家もないというのに。

 志貴皇子の御歌一首
むささびは木末求むとあしひきの 山さつ男にあひにけるかも 万267
*ムササビが梢に行こうとしたら狩人と出くわしてしまった。

【似顔絵サロン】刑部 垂麻呂 おさかべ の たりまろ ? - ?  飛鳥時代の人物。














〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集一』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=3

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