万葉集巻第三296‐299番歌(廬原の清見の崎の三保の浦)~アルケーを知りたい(1282)

▼今の静岡の海岸は昔から眺めの良さが評判だったようだ。296番は駿河の清見の崎を、297番は田子の浦を詠った歌。清見の崎を見ると「物思ひもなし」というから日頃の思い煩いも消えるらしい。後世、田子の浦は北斎が冨嶽三十六景で、広重が東海道五十三次でビジュアルにして誰でも見られるようにした。

 田口益人大夫、上野の国の司に任けらゆる時に、駿河の清見の崎に至りて作る歌二首
廬原の清見の崎の三保の浦の ゆたけき見つつ物思ひもなし 万296
*廬原の清見の崎の三保の浦のゆったりした様子を見ていると、思い悩みなどなくなってしまう。

昼見れど飽かぬ田子の浦 大君の命畏み夜見つるかも 万297
*昼に見ても見飽きることがない田子の浦。大君の命令で移動しているので夜見ることになりました。

 弁基が歌一首
真土山夕越え行きて廬原の 角太川原にひとりかも寝む 万298
*真土山を夕方から越えようとスタートしたので、廬原の角太川原でソロキャンプする羽目になりました。
 右は、或いは「弁基は春日蔵首老が法師名」といふ。

 大納言大伴卿が歌一首 未詳
奥山の菅の葉しのぎ降る雪の 消なば惜しけむ雨な降りそね 万299
*奥山の菅の葉に降り積もる雪。消えるのが惜しいので雨よ、降らないでおくれ。

【似顔絵サロン】田口 益人 たぐち の ますひと 658年 - 723年 飛鳥時代~奈良時代の貴族・歌人。















大伴 安麻呂 おおとも の やすまろ 640年 - 714年 飛鳥時代~奈良時代の公卿・歌人。旅人の父。672年の壬申の乱では大海人皇子(天武天皇)の側。















〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集一』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=3

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