万葉集巻第三305‐306番歌(沖つ白波花にもが)~アルケーを知りたい(1284)

▼今回の二つの歌は、作者の人物の精神的なゆとりがにじむ作品。305番は遷都した後の旧都を見て懐かしむ心情、なんだけど「みたくないと言ったのに見せて」などと一ひねりした表現が面白い。306番は眺めの良さ包んで妻への土産にする、のだそうだ。伝え方、表現にその人が現れるものだ、と思ふ。

 高市連黒人が近江の旧き都の歌一首
かく故に見じと言ふものを楽浪の 古き都を見せつつもとな 万305
*だから見たくないと言ってたのに・・・近江の旧き都=大津京を見せたりなんかして。
 右の歌は、或本には「小弁が作」といふ。いまだこの小弁といふ者を審らかにせず。

 伊勢の国に幸す時に、安貴王が作る歌一首
伊勢の海の沖つ白波花にもが 包みて妹が家づとにせむ 万306
*伊勢の海の沖に立つ白波は花のようだから、包んで持ち帰って妻への土産にしよう。

【似顔絵サロン】安貴王 あきおう 690年 - ? 奈良時代の皇族。志貴皇子もしくは川島皇子の孫。















〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集一』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=3

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