万葉集巻第三388‐389番歌(いざ子どもあへて漕ぎ出む)~アルケーを知りたい(1296)
▼仲間に呼びかけるときのフレーズ「いざ子ども」を搭載した作品。今回の場面は港・船、さあ、みなさん、これから海が静かなので船を出しましょう、という呼びかけ。一方、短歌のほうは海を航海していると故郷が恋しいと泣きを入れている。作者は歌の専門家、若宮年魚麻呂。
羇旅の歌一首 幷せて短歌
海神は くすしきものか
淡路島 中に立て置きて
白波を 伊予に廻らし
明石の門ゆは 夕されば
潮を満たしめ 明けされば
潮を干しむ 潮騒の
波を畏み 淡路島
磯隠り居て いつしかも
この夜の明けむと さもらふに
寐の寝かてねば 滝の上の
浅野の雉 明けぬとし
立ち騒ぐらし いざ子ども
あへて漕ぎ出む 庭も静けし 万388
*淡路島の磯で早く船出したいと待ち構えています。夜が明けて雉が騒がしくなりました。さあみなさん、船を出しましょう、海も穏やかです。
反歌
島伝ひ駿馬の崎を漕ぎ廻れば 大和恋しく鶴さはに鳴く 万389
*島伝いに船を進め駿馬崎を漕ぎ廻ると、大和が恋しくなります。鶴も鳴きたてます。
右の歌は、若宮年魚麻呂誦む。ただし、いまだ作者を審らかにせず。
【似顔絵サロン】若宮年魚麻呂 わかみやのあゆちまろ ? - ? 奈良時代の歌人。
〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集一』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=3
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