万葉集巻第六907‐912番歌(年のはにかくも見てしか)~アルケーを知りたい(1302)
▼今回から万葉集の巻6の歌を見る。最初は、723年製、詠み手は笠金村の和歌。宮がある山や川の自然を褒め、これから何度も見たい、という構造になっている。万葉人の自然の愛で方はカッコ良い。
雑歌
養老七年癸亥の夏の五月に、吉野の離宮に幸す時に、笠朝臣金村が作る歌一首 幷せて短歌
滝の上の 三船の山に
瑞枝さし 繁に生ひたる
栂の木の いや継ぎ継ぎに
万代に かくし知らさむ
み吉野の 秋津の宮は
神からか 貴くあらむ
国からか 見が欲しくあらむ
山川を 清みさやけみ
うべし神代ゆ 定めけらしも 万907
*吉野は山川が清らかなので、神代から宮に定められたのでしょう。
反歌二首
年のはにかくも見てしかみ吉野の 清き河内のたぎつ白波 万908
*毎年毎年、このようにして吉野の清らかな河内の水が跳ねて白波になっているのを見たいものです。
山高み白木綿花に落ちたぎつ 滝の河内は見れど飽かぬかも 万909
*山高い白木綿の花のような滝の河内は見飽きることがありません。
或本の反歌に曰はく
神からか見が欲しからむみ吉野の 滝の河内は見れど飽かぬかも 万910
*神がかっているほどだからみんな見たいがるのでしょう、吉野の滝の河内は見飽きることがありません。
み吉野の秋津の川の万代に 絶ゆることなくまた帰り見む 万911
*吉野の秋津の川はこれから万代にわたって絶えることがないでしょう。私も絶えることなく見に帰って来たい。
泊瀬女の造る木綿花み吉野の 滝の水沫に咲きにけれずや 万912
*泊瀬の女性が作る木綿花が吉野の滝の水沫になって咲いているかのようです。
【似顔絵サロン】笠 金村 かさ の かなむら ? - ? 奈良時代の歌人。姓は朝臣。車持千年・山部赤人と並ぶ歌人。
〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=6
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