万葉集巻第七1244‐1250番歌(娘子らが放りの髪を)~アルケーを知りたい(1354)
▼1244番の油布の山とは、大分県別府温泉から西方面にある、由布岳のことです。歌のとおり、麓には家屋がありまして、金鱗湖という池も、そこから流れる川もそして温泉もあります。別府に戻ると別府湾という海と海岸とヨットハーバーがあります。というわけで、同地は、今回の7首全部に因む土地・・・と見立ててもフィットするロケーションです。
娘子らが放りの髪を油布の山 雲なたなびき家のあたり見む 万1244
*娘子らの髪を結うという油布山には雲がたなびいています。麓に家屋が見えます。
志賀の海人の釣り舟の綱堪へかてに 心思ひて出でて来にけり 万1245
*志賀の漁師の釣り舟の係留ロープが波に揉まれるかのように私は後ろ髪を引かれる思いで家を出てきました。
志賀の海人の塩焼く煙風をいたみ 立ちは上らず山にたなびく 万1246
右の件の歌は、古集の中に出づ。
*志賀の漁師の塩焼きの煙が風が激しいので上に昇らず山の方へたなびいています。
大汝少御神の作らしし 妹背の山を見らくしよしも 万1247
*大汝と少御神がお作りになった妹背山を見るのは良きことかぎりない。
我妹子と見つつ偲はむ沖つ藻の 花咲きたれば我れに告げこそ 万1248
*沖の藻をわが妻と見立てて思い出しましょう。藻の花が咲いたら私にお知らせください。
君がため浮沼の池の菱摘むと 我が染めし袖濡れにけるかも 万1249
*貴方様のためにと思い浮沼池の菱を摘むと、私が自分で染めた袖が濡れてしまいました。
妹がため菅の実摘みに行きし我れ 山道に惑ひこの日暮らしつ 万1250
右の四首は、柿本朝臣人麻呂が歌集に出づ。
*妻のために菅の実を摘みに山に入った私。山道に迷ってしまい、一日中過ご山で過ごしました。
【似顔絵サロン】同時代の乱、藤原広嗣の乱の関係者:佐伯 常人 さえき の つねひと ? - ? 奈良時代の貴族。安倍虫麻呂と共に藤原広嗣の乱を鎮圧する官軍のリーダー。広嗣に10回呼びかけ降伏を説得。乱鎮圧後、昇進。
〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=7
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