万葉集巻第七1251‐1257番歌(月草に衣ぞ染むる)~アルケーを知りたい(1355)
▼問答という小題がついた歌の数々。面白いものや何を言ってんだか分からんものまであって、脱力系和歌だと思ふ。最後に「ゆめ」をつけるスタイルも良いなあと思ふ。これを忘れちゃならんよゆめ、みたいな使い方。
問答
佐保川に鳴くなる千鳥何しかも 川原を偲ひいや川上る 万1251
*佐保川で鳴いている千鳥よ。何でそう嬉しそうに川原を上ってるのかい。
人こそばおほにも言はめ我がここだ 偲ふ川原を標結ふなゆめ 万1252
右の二首は、鳥を詠む。
*人はここを何でもない場所のように言うでしょう。でも私はここが気に入っているのです。決して縄を張って立ち入り禁止にしないでください。
楽浪の志賀津の海人は我れなしに 潜きはなせそ波立たずとも 万1253
*楽浪の志賀津の漁師よ、私がいないときには波のないコンディションの良い日でも潜らないでください、見られないと残念だから。
大船に楫しもあらなむ君なしに 潜きせめやも波立たずとも 万1254
右の二首は、海人を詠む。
*大きな船と楫があれば良いのに、と思います。でも貴方様のいらっしゃらないときには波が静かなときでも潜ったりしません。
臨時
月草に衣ぞ染むる君がため 斑の衣摺らむと思ひて 万1255
*ツユクサで衣を染める貴方様のため、斑の衣を仕立てようと思います。
春霞井の上ゆ直に道はあれど 君に逢はむとた廻り来も 万1256
*井戸までの道はまっすぐなんですけど、貴方様に逢えるかもと思って回り道しています。
道の辺の草深百合の花笑みに 笑みしがからに妻と言ふべしや 万1257
*道端の草むらで百合の蕾を見て気に入ったからといって、自分のものだと言うのはどうかと思います。
【似顔絵サロン】同時代の乱、藤原広嗣の乱の関係者:阿倍 虫麻呂 あべ の むしまろ ? - 752年 奈良時代の貴族・歌人。740年、藤原広嗣の乱を鎮圧する官軍のリーダーの一人。
〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=7
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