万葉集巻第七1328‐1335番歌(陸奥の安達太良真弓)~アルケーを知りたい(1367)
▼今回も譬喩の歌シリーズの続き。和琴、弓、山に思いを寄せる人を喩えて詠っている。
日本琴に寄す
膝に伏す玉の小琴の事なくは いたくここだく我れ恋ひめやも 万1328
*膝に乗せる玉のような小型の琴。あんな事が起きたので私は特に大事に思っているのだ。
弓に寄す
陸奥の安達太良真弓弦はけて 引かば人の我を言なさむ 万1329
*陸奥の安達太良山の木で作った真弓の弦をぐいと引くと世間は私のことをあれこれ言うだろうか。
南淵の細川山に立つ檀 弓束巻くまでに人に知らえじ 万1330
*南淵の細川山に立っている檀の木。弓に仕上げて握る部分に束を巻くまで人に知られたくない。
山に寄す
岩畳畏き山と知りつつも 我れは恋ふるか並にあらなくに 万1331
*岩が畳のように重なる恐ろしい山と知っています。分不相応ながら恋焦がれております。
岩が根のこごしき山に入りそめて 山なつかしみ出でかてぬかも 万1332
*岩がごつい山だけど、入ると親しみを覚えて立ち去りがたい。
佐保山をおほに見しかど今見れば 山なつかしも風吹くなゆめ 万1333
*佐保山は注意してみたことがなかったけれど、今見ると何とも懐かしい。風よ吹かないでおくれ。
奥山の岩に苔生し畏けど 思ふ心をいかにかもせむ 万1334
*奥山の岩には苔が生して畏れ多いけれど、憧れる気持ちは抑えようがありません。
思ひあまりいたもすべなみ玉たすき 梅傍の山に我れ標結ひつ 万1335
*思い余って梅傍の山に標縄を張ってみました。
【似顔絵サロン】同時代の乱、672年の壬申の乱の関係者:田中 足麻呂 たなか の たりまろ ? - 698 飛鳥時代の人物。壬申の乱では大海人皇子側。倉歴道を守っていた時、田辺小隅の夜襲を受けて敗走。
〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=7
コメント
コメントを投稿