万葉集巻第七1336‐1342番歌(冬こもり春の大野を)~アルケーを知りたい(1368)

▼1336は野焼きと心を焼くとを掛け合わせた歌。阿蘇の野焼きの映像を思うとなんともダイナミックな歌。1337は後悔の歌、きっと作者は男だ。1338は娘を思う父親の歌か。1339はこの人で大丈夫かと不安に思う女性の歌。1340は男女どちらの作か分からない。1341と1342は前出の1337と同じようなタイプの男の作。こうやって勝手に作者像を想像するのは面白い。

 草に寄す
冬こもり春の大野を焼く人は 焼き足らねかも我が心焼く 万1336
*春、野原を野焼きする人は飽き足らないと見えて私の心も焼いています。

葛城の高間の草野 早知りて標刺さましを今ぞ悔しき 万1337
*葛城の高間の萱は良いのでもっと早く知って人が入らないように縄張りしておくべきだった。悔しい。

我がやどに生ふるつちはり心ゆも 思はむ人の衣に摺らゆな 万1338
*私の敷地に生えているつちはりの草。どうでもいいような人の衣の染料になってはいけないよ。

月草に衣色どり摺らめども うつろふ色と言ふが苦しき 万1339
*月草の染料で衣を染めようと思うけれど、色が褪せやすいと聞いて迷っています。

紫の糸をぞ我が搓るあしひきの 山橘を貫かむと思ひて 万1340
*紫色の糸を搓っているところです。山の橘の実を通そうと思って。

真玉つく越智の菅原我れ刈らず 人の刈らまく惜しき菅原 万1341
*越智の菅原で草を刈るのを見送りました。すると誰かが刈りました。惜しい、悔しい菅原です。

山高み夕日隠りぬ浅茅原 後見むために標結はましを 万1342
*山が高くて浅茅原を照らすはずの夕日を遮ります。後で人に邪魔されずじっくり見るために縄張りをしておけばよかった。

【似顔絵サロン】同時代の乱、672年の壬申の乱の関係者:田辺 小隅 たなべ の おすみ ? - ? 飛鳥時代の人物。壬申の乱では大友皇子側。倉歴道を守っていた田中足麻呂に夜襲をかけて敗走させる。















〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=7

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