万葉集巻第七1356‐1362番歌(秋さらば移しもせむと)~アルケーを知りたい(1371)

▼木や花を人に喩えた歌七首。1361の「摺り付け」と1362の「移し」は布に花の色を染めるという意味。白い布に花をごしごし押し付けて色を摺り付けたりするのではない。ケイトウの花を移植するのでもない。すぐ思ひ違ひするのでどうにかならんものかと思ふ。

向つ峰に立てる桃の木ならめやと 人ぞささやく汝が心ゆめ 万1356
*向こうの山の峰の桃の木は実が生らないと人は言う。でも分からないぞ。

たらちねの母がその業る桑すらに 願へば衣に着るといふものを 万1357
*母が世話している桑の木でさえ、葉を蚕が食べれば服にして着られるのに。

はしきやし我家の毛桃本茂く 花のみ咲きてならずあらめやも 万1358
*我が家のかわいい桃は根の近くで花が咲くだけで、実はならないのだろうか。

向つ峰の若桂の木下枝取り 花待つい間に嘆きつるかも 万1359
*向かいの峰に生えている桂の木。枝払いして花を待つ間も待ち遠しくてため息が出ます。

 花に寄す
息の緒に思へる我れを山ぢさの 花にか君がうつろひぬらむ 万1360
*命の限り思っている私です。でも貴方様の心は山ぢさの花のように移ろってしまったのでしょうか。

住吉の浅沢小野のかきつはた 衣に摺り付け着む日知らずも 万1361
*住吉の浅沢小野に咲いているカキツバタ。衣に染めて着られる日はいつでしょう。

秋さらば移しもせむと我が蒔きし 韓藍の花を誰か摘みける 万1362
*秋になったら移し染めしようと私が蒔いたケイトウの花を誰かが摘んでしまった。

【似顔絵サロン】同時代の乱、672年の壬申の乱の関係者:赤染 徳足 あかそめ の とこた ? - ? 飛鳥時代の人物。渡来系氏族。672年、壬申の乱で高市皇子に従って都を脱した。仲間は民大火、大蔵広隅、坂上国麻呂、古市黒麻呂、竹田大徳、胆香瓦安倍。















〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=7

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