万葉集巻第七1370‐1375番歌(み空行く月読壮士)~アルケーを知りたい(1373)

▼1370の「はたつみ」は「庭立水」、庭に溜まった水、の意。一つ分からないワードがあると全体で何を言っているのか分からない例。1372はお馴染みの月読壮士が出てくる歌。今回の歌も人を雨や月に喩えて詠っている作品。

 雨に寄す
はなはだも降らぬ雨故に はたつみいたくな行きそ人の知るべく 万1370
*それほど降った雨でもないのだから、庭の水たまりの水よ、目立つように勢いよく流れ出さないでください。

ひさかたの雨には着ぬをあやしくも 我が衣手は干る時なさか 万1371
*雨の時は着ていないのに、どういうわけか私の服の袖が乾くことがありません。

 月に寄す
み空行く月読壮士夕さらず 目には見れども寄るよしもなし 万1372
*空行く月を夕方目にします。けれど、近寄る方法はありません。

春日山高くあらし岩の上の 菅の根見むに月待ちかたし 万1372
*春日山はよほど高いのでしょう。岩の上の菅の根を見たいのに、月がいっこうに出てこない。

闇の夜は苦しきものをいつしかと 我が待つ月も早も照らぬか 万1373
*闇の夜は苦しいもの。いつ出るのか、と待つ月よ、早く照らしてください。

朝霜の消やすき命誰がために 千年もがもと我が思はなくに 万1374
 右の一首は、譬喩歌の類にあらず。
 ただし、闇の夜の歌人の所心の故に、ともにこの歌を作る。
 よりて、この歌をもちて、この次に載す。
*朝の霜のように消えやすい命。誰のために千年も続いて欲しいと思っているというのか。

【似顔絵サロン】同時代の乱、672年の壬申の乱の関係者:坂上 国麻呂 さかのうえ の くにまろ ? - ? 飛鳥時代の人物。渡来系の氏族。 672年、壬申の乱で高市皇子に従って都を脱した。仲間は、民大火、赤染徳足、大蔵広隅、古市黒麻呂、竹田大徳、胆香瓦安倍















〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=7

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