万葉集巻第八1442‐1447番歌(風交り雪は降るとも)~アルケーを知りたい(1385)

▼寒い師走に春の歌を眺めるのも一興。1442の「悲しさ」はいとおしいの意。悲しい気持ちも混じった味わいの言葉のようだ。

 大蔵少輔丹比屋主真人が歌一首
難波辺の人の行ければ後れ居て 春菜摘む子を見るが悲しさ 万1442
*難波の方に夫が出張に行った後、残って春菜を摘む子を見るといとおしさが募ります。

 丹比真人乙麻呂が歌一首 屋主真人が第二子なり
霞立つ野の上の方に行きしかば うぐひす鳴きつ春になるらし 万1443
*霞が立つ野原に登ってみるとウグイスが鳴いています。春になったのですねえ。

 高田女王が歌一首 高安が女なり
山吹の咲きたる野辺のつほすみれ この春の雨に盛りなりけり 万1444
*山吹が咲いている野原の壺スミレ。この春の雨で勢いよく咲いています。

 大伴坂上郎女が歌一首
風交り雪は降るとも実にならぬ 我家の梅を花に散らすな 万1445
*風が吹き雪が降ってもいいけれど、まだ実をつけない我が家の梅の花を散らさないでおくれ。

 大伴坂上郎女が歌一首
世の常に聞けば苦しき呼子鳥 声なつかしき時にはなりぬ 万1446
 右の一首は、天平四年の三月の一日に、佐保の宅にして作る。
*ふだんは耳にしても面白くもない呼子鳥だけど、その鳴き声に懐かしさを覚える時になりました。

【似顔絵サロン】同時代の乱、672年の壬申の乱の関係者:山部王 やまべおう ? - 672天武天皇元年7月31日 飛鳥時代の皇族。壬申の乱で大友皇子の将。味方の蘇我果安、巨勢比等(巨勢人)に殺された。















〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=8

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