万葉集巻第八1511‐1517番歌(経もなく緯も定めず)~アルケーを知りたい(1390)
▼万葉の時代の人は、雁や黄葉に季節や思いを感じていたようだ。1512の大津皇子の歌は経糸、緯糸の区別が出てくる。これは今でも織物のポイント。確かに山の黄葉は経糸も緯糸もないのかも。
秋雑歌
岡本天皇の御製歌一首
夕されば小倉の山に鳴く鹿は 今夜は鳴かず寝ねにけらしも 万1511
*夕方になると鹿が小倉山で鳴く。でも今夜は鳴かずに寝てしまったらしい。
大津皇子の御歌一首
経もなく緯も定めず娘子らが 織る黄葉に霜な降りそね 万1512
*縦糸も横糸も決めないで娘子たちが織った山の黄葉に霜が降りています。
穂積皇子の御歌二首
今朝の朝明雁が音聞きつ春日山 もみちにけらし我が心痛し 万1513
*今朝の明け方、雁が鳴いて飛んでいく声が聞こえる春日山。紅葉したのだろう、心が痛い。
秋萩は咲くべくあらし我がやどの 浅茅が花の散りゆく見れば 万1514
*秋萩が咲く季節になったらしい。我が家の浅茅の花が散り始めたところをみると。
但馬皇女の御製歌一首 一書には「子部王が作なり」といふ
言繁き里に住まずは今朝鳴きし 雁にたぐひて行かましものを 一には「国にあらずは」といふ 万1515
*人の噂話が煩い里から、今朝鳴いた雁と一緒にどこか違う場所に行ければ良いのに。
山部王、紅葉を惜しむ歌一首
秋山にもみつ木の葉のうつりせば さらにや秋を見まく欲りせむ 万1516
*秋山で紅葉している木の葉が散ってしまうと、もっと秋を見たい気持ちになるでしょうね。
長屋王が歌一首
味酒三輪の杜の山照らす 秋の黄葉の散らまく惜しも 万1517
*三輪山の杜を照らすような秋の黄葉。散っていくのが惜しい。
【似顔絵サロン】同時代の乱、672年の壬申の乱の関係者:中臣 金 なかとみ の かね ? - 672天武天皇元年9月24日 飛鳥時代の官人。中臣可多能祜の孫。鎌足の従兄弟。天智天皇、大友皇子の重臣、壬申の乱で敗れて斬殺。
岡本天皇=舒明天皇 じょめいてんのう 593 - 641 第34代天皇。蘇我蝦夷が立てた天皇。政治の実権は蘇我蝦夷。630(37) 遣唐使を開始。皇后は皇極天皇。息子は中大兄皇子。
大津皇子 おおつのみこ 663 - 686 天武天皇の皇子。母は天智天皇皇女の大田皇女。異母兄が草壁皇子。
山部王 やまべおう ? - 672 飛鳥時代の皇族。壬申の乱で大友皇子の将。味方の蘇我果安、巨勢比等(巨勢人)に殺された。
長屋王 ながやおう 676 - 729 奈良時代前期の皇親・政治家。高市皇子の長男。藤原四子の策謀で自殺。長屋王の変。
〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=8
コメント
コメントを投稿