万葉集巻第八1581‐1586番歌(手折らずて散りなば惜し)~アルケーを知りたい(1399)
▼いまは冬。秋の風情たっぷりの歌を眺めるのも良き。1582や1583を見ると、雨の中を歩くのもわるくないなと思ふ。
橘朝臣奈良麻呂、集宴を結ぶ歌十一首
手折らずて散りなば惜しと我が思ひし 秋の黄葉をかざしつるかも 万1581
*手折らないまま散ってしまうのは惜しいと思ったので、秋の黄葉をかざしました。
めづらしき人に見せむと黄葉を 手折りぞ我が来し雨の降らくに 万1582
右の二首は橘朝臣奈良麻呂。
*滅多にお目にかかれない人にお見せしようと、雨の中、黄葉を手折って参りました。
黄葉を散らすしぐれに濡れて来て 君が黄葉をかざしつるかも 万1583
右の一首は久米女王。
*黄葉を散らす時雨に濡れながらやって来ました。そして見たのが黄葉をかんざしにしている貴方様です。
めづらしと我が思ふ君は秋山の 初黄葉に似てこそありけれ 万1584
右の一首は長忌寸が娘。
*滅多にお目にかかれない貴方様は、秋の山の初黄葉のようでございます。
奈良山の嶺の黄葉取れば散る しぐれの雨し間なく降るらし 万1585
右の一首は内舎人県犬養宿禰吉男。
*奈良山の黄葉は取ろうとすると散るそうです。時雨のように間段なく散っているらしい。
黄葉を散らまく惜しみ手折り来て 今夜かざしつ何か思はむ 万1586
右の一首は県犬養宿禰持男。
*黄葉が散るのが惜しいので手折ってきました。今夜かんざしにして雑念なし、です。
【似顔絵サロン】橘 奈良麻呂 たちばな の ならまろ 721 - 757 奈良時代の公卿。橘諸兄の子。橘奈良麻呂の乱の後、獄死。
長忌寸意吉麻呂 ながのいみきおきまろ ? - ? 持統・文武両朝の官人・歌人。渡来系。
県犬養 吉男 あがたいぬかい の よしお ? - ? 奈良時代の貴族。1585番は738年の作品。
県犬養 持男 あがたのいぬかいのもちお ? - ? 奈良時代の貴族。
〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=8
コメント
コメントを投稿