万葉集巻第八1636‐1641番歌(沫雪に降られて咲ける)~アルケーを知りたい(1401)
▼今回は冬の雑歌(ぞうか)。相聞歌や挽歌じゃない歌。1636は、ちょっと謎。というのは、自分の家がある場所にはたくさん雪が降って欲しいという意味なのかな、今の感覚からすると変わってるな、と思ふ歌だから。1637と1638の「黒木もち造れる室」は樹皮を残した材木で建てた家、部屋、という意味で、そんな建て方には憧れるわーと思ふ。
冬雑歌
舎人娘子が歌一首
大口の真神の原に降る雪は いたくな降りそ家もあらなくに 万1636
*大口の真神の原に降る雪よ、激しく降らないで欲しいわ、私の家があるわけでもないから。
太上天皇(元正天皇)の御製歌一首
はだすすき尾花逆葺き黒木もち 造れる室は万代までに 万1637
*まだ穂を出してないススキや出たススキで屋根を葺いた木造の室はこれからずっと存在するでしょう。
天皇(聖武天皇)の御製歌一首
あおによし奈良の山なる黒木もち 造れる室は座せど飽かぬかも 万1638
右は聞くに「左大臣長屋王が佐保の宅に御在して 宴したまふときの御製」と。
*奈良山の材で樹皮を残して作った木の部屋は良いね、中にいて退屈しないよ。
角朝臣広弁が雪梅の歌一首
沫雪に降られて咲ける梅の花 君がり遣らばよそへてむかも 万1641
*沫雪に降られて梅の花が咲いたように見える枝があります。これを貴方様にお贈りすれば同じように見立ててくださるでしょうか。
【似顔絵サロン】元正天皇 げんしょうてんのう 680 - 748 第44代天皇。独身で即位した初めての女性天皇。母親は元明天皇。
聖武天皇 しょうむてんのう 701 - 756 第45代天皇。父親は文武天皇。
長屋王 ながやおう 676 - 729 奈良時代前期の皇親・政治家。高市皇子の長男。
角 広弁 つぬの ひろべ ? - ? 奈良時代の官吏。
〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=8
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