万葉集巻第八1656‐1659番歌(酒坏に梅の花浮かべ)~アルケーを知りたい(1405)

梅の花から見ると、1656で「散りぬともよし」と言われ、次の1657では「散りこすなゆめ」と言われる。梅の花にしてみれば「私はいったいどうすれば良いのでしょうか」となる歌2首。面白い。

 大伴坂上郎女が歌一首
酒坏に梅の花浮かべ思ふどち 飲みての後は散りぬともよし 万1656
*盃に梅の花を浮かべて、仲の良い仲間同士でパーティをします。それが終わった後なら、花は散ってよろしい。

 和ふる歌一首
官にも許したまへり今夜のみ 飲まむ酒かも散りこすなゆめ 万1657
 右は、酒は官に禁制して「京中の閭里、集宴すること得ず。ただし、親々一二飲楽することは聴許す」といふ。これによりて和ふる人この発句を作る。
*お役所のお許しが出たので、飲める機会は今夜だけではあるまいよ。だから、梅の花よ、まだまだ散らないで欲しい。

 藤堂后、天皇聖武天皇に奉る御歌一首
我が背子とふたり見ませばいくばくか この降る雪の嬉しくあらまし 万1658
*夫と一緒に眺められれば、この降る雪がどんなにか嬉しいことでしょう。

 他田広津娘子が歌一首
真木の上に降り置ける雪のしくしくも 思ほゆるかもさ夜問へ我が背 万1659
*真木の上に雪がしきりに降りしきっています。ますます今夜、貴方様においでいただきたい気持ちです。

【似顔絵サロン】聖武天皇 しょうむてんのう 701 - 756 第45代天皇。父親は文武天皇、母親は藤原不比等の娘・宮子。















〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=8

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