万葉集巻第九1670‐1674番歌(朝開き漕ぎ出て我れは)~アルケーを知りたい(1407)
▼今回は、海、海岸の歌。船で海に出て陸を眺めている歌。海岸の波や松原を詠う歌。白、黒、紅の文字もありカラフル。1670は釣りする海人を見たい、という。見るだけのものがあったのだろう。歌を見て似たような風景を見たくなる。海の香りをかぎたくなる。
朝開き漕ぎ出て我れは由良の崎 釣りする海人を見て帰り来む 万1670
*早朝に船出して由良の崎で釣りをする漁師の姿を見てから帰りましょう。
由良の崎潮干にけらし白神の 磯の浦みをあへて漕ぐなり 万1671
*由良の崎はいま干潮らしい。白神の磯の浦を苦労して漕いでいる。
黒牛潟潮干の浦を紅の 玉裳裾引き行くは誰が妻 万1672
*黒牛潟の潮が引いたとき、紅のスカートをひるがえしながら歩いているのは誰の奥さんだろうか。
風莫の浜の白波いたづらに ここに寄せ来る見る人なしに 一には「ここに寄せ来も」といふ 万1673
右の一首は、山上臣憶良が類聚歌林には「長忌寸意吉麻呂、詔に応へてこの歌を作る」といふ。
*風莫の浜で白波がしきりに立っている。ここに見に来る人もいないのに。一には「ここに波が寄せ来ても見に来る人はいないのに」
我が背子が使来むかと出立の この松原を今日か過ぎなむ 万1674
*夫からの使いを妻が門に出て待つという「出立の松原」を今日、通り過ぎます。
【似顔絵サロン】長忌寸意吉麻呂 ながのいみきおきまろ ? - ? 持統・文武両朝の官人・歌人。渡来系。宴席のとき即興で歌を作る名人。一二の目のみにはあらず五六三四さへありけり双六の采 万3829
〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=9
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