万葉集巻第九1680‐1684番歌(春山は散り過ぎぬとも)~アルケーを知りたい(1409)
▼1680と1681は出張中の夫を妻が案じている歌。1682は仙人を描いた屏風でも見ながらの歌のよう。1683と1684は花が咲いていようが散っていようが歌にできる例。
後人の歌二首
あさもよし紀伊へ行く君が真土山 越ゆらむ今日ぞ雨な降りそね 万1680
*紀伊の国に行く貴方様が今日は真土山を越える予定です。雨よ、降ってくれるな。
後れ居て我が恋ひ居れば白雲の たなびく山を今日か越ゆらむ 万1681
*貴方様が出かけたので恋しがっております。貴方様は今日あたり白雲がたなびく山を越えていらっしゃるのでしょうか。
忍壁皇子に献る歌一首 仙人の形を詠む
とこしへに夏冬行けや裘(かはごろも)扇 放たぬ山に住む人 万1682
*永遠に夏と冬が同時に来るので、仙人は革コートとうちわを手放さないのですね。
舎人皇子に献る歌二首
妹が手を取りて引き攀ぢふさ手折り 我がかざすべく花咲けるかも 万1683
*妻の手を取るような調子でぐいと引き寄せて手折り簪にしたくなるほど花が咲いています。
春山は散り過ぎぬとも三輪山は いまだふふめり君待ちかてに 万1684
*春山の花は散ってしまいました。けれど三輪山はまだ蕾のままで貴方様を待っています。
【似顔絵サロン】忍壁皇子 おさかべ の みこ ? - 705 天武天皇の皇子。大宝律令の筆頭の編纂者。
舎人皇子 とねりしんのう 676年 - 735 天武天皇の皇子。政治家・歌人。729年、長屋王の変で罪を糾問。
〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=9
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