万葉集巻第九1685‐1689番歌(あぶり干す人もあれやも)~アルケーを知りたい(1410)

1685と1686は間人大浦(はしひとのおおうら)という人の歌。歌を見るに、間人はとても素直な性格の人ではないか、という気がする。古今集の仮名序に、古代の帝は侍臣の歌からそれぞれの心を御覧になった、というくだりがあるけど、確かに歌にはその人物像がにじみ出るのだろう。
▼1688は旅先から洗濯物を家に送っちゃろうか、という歌。長旅おつかれさまです。

 泉川の辺にして間人宿禰が作る歌二首
川の瀬のたぎちを見れば玉かも 散り乱れたる川の常かも 万1685
*川の瀬で水が飛び散る様子は玉のよう。水が散り乱れる川ではいつものことだけど。

彦星のかざしの玉し妻恋ひに 乱れにけらしこの川の瀬に 万1686
*まるで彦星のかんざしの玉のよう。妻恋しさでこの川の瀬で散り乱れているのでしょう。

 鷺坂にして作る歌一首
白鳥の鷺坂山の松蔭に 宿りて行かな夜も更けゆくを 万1687
*白鳥の鷺坂山の松蔭で野宿しましょう。夜も遅くなってきましたから。

 名木川にして作る歌二首
あぶり干す人もあれやも濡れ衣を 家には遣らな旅のしるしに 万1688
*ここには濡れた服を乾かしくれる人がいないから、家に送ろうかな、旅の記念に。

あり布のへつきて漕がに杏人の 浜を過ぐれば恋しくありなり 万1689
*体にフィットする服のように舟を岸に沿って漕いでください。杏人浜を過ぎると恋しくなるでしょうから。

【似顔絵サロン】間人 大浦 はしひとのおおうら ? - ? 文武朝頃の役人。間人宿禰は、天皇と臣下、または異国人との間をとりつぐ職掌の伴造氏族。















〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=9

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