万葉集巻第九1701‐1705番歌(雲隠り雁鳴く時は)~アルケーを知りたい(1413)
▼ふだんの生活でも、空を見る、月を見る、大事かも知れないなと思ふ。1701などは、夜中に月を見て雁の鳴き声まで聞いているんだから、心のゆとりがないとできるこっちゃない。心の姿勢を自問するのにちょうど良い歌5首。
弓削皇子に献る歌三首
さ夜中と夜は更けぬらし雁が音の 聞こゆる空ゆ月渡る見ゆ 万1701
*夜が更けて真夜中になったようです。雁の鳴き声が聞こえる空で月が動いています。
妹があたり繁き雁が音夕霧に 来鳴きて過ぎぬすべなきさまでに 万1702
*妻の家のあたりで雁がよく鳴いています。その雁が夕霧に紛れてこちらに来て鳴いているのを聞くと悲しい気持ちになります。
雲隠り雁鳴く時は秋山の 黄葉片待つ時は過ぐとも 万1703
*雲に隠れて雁が鳴くのを聞くと秋山の黄葉がひたすら待ち遠しくなります。黄葉の時期は雁の後なんですけど。
舎人皇子に献る歌二首
ふさ手折り多武の山霧繁みかも 細川の瀬に波の騒ける 万1704
*多武の山霧が濃いからでしょうか、細川の瀬の波音がいっそう高いようです。
冬こもり春へを恋ひて植ゑし木の 実になる時を片待つ我れぞ 万1705
*冬の間、春が来るのを待って植えた木。その木が実をつける時をひたすら待っている私です。
【似顔絵サロン】弓削皇子 ゆげのみこ 673 - 699 天武天皇の皇子。高市皇子薨去後の皇嗣選定会議で発言しようとして葛野王に叱責された。
〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=9
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