万葉集巻第九1706‐1709番歌(山背の久世の鷺坂)~アルケーを知りたい(1414)
▼1706の「衣手」は歌の中でどんな役をしているのか解釈できなかった。現代の解釈者も?と思っているんじゃないかと思ひたい。そこにいくと1707は分かりやすい。1708は、「なぜ、どうして」と思ふし、1709は「そんなことを言われても・・・」と思ふ。時代を越えて人の心を動かす万葉の歌である。
舎人皇子の御歌一首
ぬばたまの夜霧は立ちぬ衣手を 高屋の上にたなびくまでに 万1706
*夜の霧が立ちこめています。塔の屋根の上までたなびくほどに。
鷺坂にして作る歌一首
山背の久世の鷺坂神代より 春は萌りつつ秋は散りけり 万1707
*山背の久世の鶯坂は、昔の神の時代から、春は木々の葉が萌え出し、秋は散り落ちます。
泉川の辺にして作る歌一首
春草を馬咋山ゆ越え来なる 雁の使は宿り過ぐなり 万1708
*馬咋山を越えて来た雁たちは、ここで宿ることなく飛び去っていきます。
弓削皇子に献る歌一首
御食向ふ南淵山の巌には 降りしはだれか消え残りたる 万1709
右は、柿本朝臣人麻呂が歌集に出づるところなり。
*南淵山の岩に降り積もった雪は消えてしまったろうか、それとも、残っているのだろうか。
【似顔絵サロン】舎人親王 とねりしんのう 676 - 735 天武天皇の皇子。政治家・歌人。720年、『日本書紀』編集の総裁。729年、長屋王の変では、新田部親王らと共に罪を糾問。
〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=9
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