万葉集巻第十2231-2234番歌(一日には千重しくしくに)~アルケーを知りたい(1480)
▼春に秋の歌を見ていると、二つの季節の味の違いがどこにあるのか、考えたくなる。春に桜花が散り、秋に萩の花が散る、散り落ちる点は同じ。風が吹くのも同じ。生き物が鳴くのも同じ。雨が降るのも同じ。同じが多いのに、季節の味わいが違う。この違いはどこから来るのだろうか。
萩の花咲きたる野辺にひぐらしの 鳴くなるなへに秋の風吹く 万2231
*萩の花が咲いている野原でヒグラシが鳴いています。そこに秋の風が吹いてきます。
秋山の木の葉もいまだもみたねば 今朝吹く風は霜も置きぬべく 万2232
*秋山の木の葉がまだ紅葉していないのに、今朝吹く風は霜を置いていくほど冷たい。
芳を詠む
高松のこの嶺も狭に笠立てて 満ち盛りたる秋の香のよさ 万2233
*高松のこの峰の狭に笠を立てるようにして満ち溢れている秋の香りの良いことといったら。
雨を詠む
一日には千重しくしくに我が恋ふる 妹があたりにしぐれ降る見ゆ 万2234
右の一首は、柿本朝臣人麻呂が歌集に出づ。
*一日中繰返し思う我が妻のいるあたりに時雨が降るのが見えます。
【似顔絵サロン】万葉集の編集人、大伴家持(718-785)の人脈:桓武天皇 かんむてんのう 737 - 806 第50代天皇(781 - 806) 平城京から長岡京および平安京への遷都を行った。782年、家持(64)は氷上川継の乱への関与を疑われ解官されるも四か月後に復帰。783年には中納言に、784年には持節征東将軍に任ぜられる。785年、出張先の陸奥国で死去。同年、藤原種継暗殺事件が発生。桓武天皇が亡くなったばかりの家持に対して激しく怒る。
〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=10
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