万葉集巻第十2312-2315番歌(我が袖に霰た走る)~アルケーを知りたい(1482)
▼今回は冬雑歌4首。私の一押しは2312番。ばらばらと降ってきた霰(あられ)を袖に包んで妻に見せよう、という歌。気温は寒いかも知れないが気持ちは暖かい。2315番も、枝がたわむほど雪が降り積もって山道がどれか分からないと詠う、ゆったりした心の構えに、狭量な己が諭される思いがするので、良い歌だ。
冬雑歌
我が袖に霰た走る巻き隠し 消たずてあらむ妹が見むため 万2312
*袖に霰がぱらぱらと落ちる。これを妻に見せるため包んでおこう。
あしひきの山かも高き巻向の 崖の小松にみ雪降りくる 万2313
*山が高いからなのか、巻向の崖に生えた小松に雪が降っています。
巻向の檜原もいまだ雲居ねば 小松が末ゆ沫雪流る 万2314
*巻向の檜原にはまだ雲がかかってないのに、小松の枝の先から沫雪が流れてきます。
あしひきの山道も知らず白橿の 枝もとををに雪の降れれば 或いは「枝もたわたわ」といふ 万2315
右は、柿本朝臣人麻呂が歌集に出づ。ただし、件の一首は、或本には「三方沙弥が作」といふ。
*山道がどこにあるのか分かりません。枝もたわわに雪が降り積もっているので。
【似顔絵サロン】万葉集の編集人、大伴家持(718-785)の人脈:坂上 苅田麻呂 さかのうえ の かりたまろ 728 - 786 奈良時代の公卿・武人。代々弓馬の道を職とし馳射(走る馬からの弓を射ること)を得意とする武門の一族。父が坂上犬養。子が田村麻呂。
〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=10
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