万葉集巻第十2328-2331番歌(来て見べき人もあらなくに)~アルケーを知りたい(1486)

▼2328番の歌には何とも言えない感慨というか郷愁のような味わいがある。俺を訪ねて来る人なんていないから、よく咲いた梅の花なんだけど、散ってしまっても良いよ、と花に呼びかけるスタイル。誰かと梅の花をネタに会話できればよいのだが。それができないので、梅の花が孤独感を強調してしまう。散りぬともよし、と言ってしまう心情が、分かるわーと思ふ。

来て見べき人もあらなくに我家なる 梅の初花散りぬともよし 万2328
*わざわざやって来て見てくれる人もいないので、我が家の梅の一番花はこのまま散ってよし。

雪寒み咲きには咲かぬ梅の花 よしこのころはかくてもあるがね 万2329
*雪降る寒さなので咲こうにも咲けない梅の花よ。ま、このままでいてもよかろう。

 露を詠む
妹がためほつ枝の梅を手折るとは 下枝の露に濡れにけるかも 万2330
*妻のためにと思って飛び出た梅の枝を手折ったところ、下の枝についていた露で濡れてしまった。

 黄葉を詠む
八田の野の浅茅色づく有乳山 嶺の沫雪寒く降るらし 万2331
*八田野の浅茅が色づいています。有乳山の嶺では沫雪が寒々と降っているようです。

【似顔絵サロン】万葉集の編集人、大伴家持(718-785)の人脈:満誓 まんぜい ? - ? 飛鳥時代から奈良時代の貴族・僧・歌人。723年、観世音寺の造寺司として筑紫に赴任。727年、大宰府に赴任した大伴旅人らと共に筑紫歌壇を形成。
















〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=10

コメント

このブログの人気の投稿

万葉集巻第十2219-2222番歌(夕さらずかはづ鳴くなる)~アルケーを知りたい(1477)

万葉集巻22番歌(常にもがもな常処女)~アルケーを知りたい(1242)

万葉集巻第二147‐149番歌(天の原振り放け見れば大君の)~アルケーを知りたい(1266)