万葉集巻第十七3914-3917番歌(ほととぎす今し来鳴かば)~アルケーを知りたい(1494)
▼「このタイミングでこうなったら凄いんだけど」という気持ちを歌にしたのが3914番。「万代に語り継ぐ」は大げさじゃないかと思うけど、日常の一コマを際立たせてアクセントをつける作者の田口馬長、人生を面白く送れる人とお見受けした。
続く三首は山部赤人のウグイスの歌。なんだか言葉の選び方、ならべ方の品位が高い気がする。
霍公鳥を思ふ歌一首 田口朝臣馬長作る
ほととぎす今し来鳴かば万代に 語り継ぐべく思ほゆるかも 万3914
右は、伝へて云はく、「ある時に交遊集宴す。この日ここに、霍公鳥喧かず。
よりて、件の歌を作り、もちて思慕の意を陳ぶ」といふ。
ただし、その宴する所幷せて年月、いまだ詳審らかにすること得ず。
*ホトトギスが今ここに来て鳴いてくれたら、これからずっと先まで語り継げる話になるのだが。
山部宿禰赤人、春鶯を詠む歌一首
あしひきの山谷越えて野づかさに 今は鳴くらむうぐひすの声 万3915
右は、年月と所処と、いまだ詳審らかにすること得ず。
ただし、聞きし時のまにまに、ここに記載す。
*山や谷を越えた小高いところで今、ウグイスが鳴いている声が聞こえます。
十六年の四月の五日に、独り平城の故宅に居りて作る歌六首
橘のにほへる香かもほととぎす 鳴く夜の雨にうつろひぬらむ 万3916
*橘の花の香。ホトトギスが鳴く夜の雨で消えてしまっただろうか。
ほととぎす夜声なつかし網ささば 花は過ぐとも離れずか鳴かむ 万3817
*ホトトギスが夜鳴く声が心に沁みる。網で囲っておけば花が終わっても鳴いてくれるだろうか。
【似顔絵サロン】田口 馬長 たぐち の うまおさ ? - ? 奈良時代の歌人。
〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集四』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=17
コメント
コメントを投稿