万葉集巻第十七3922-3925番歌(降る雪の白髪までに)~アルケーを知りたい(1496)

▼今回は、太上天皇(在位時は元正天皇)の御在所に雪が積もったので、左大臣や大納言が集まって雪掃きをしたとき、詠んだ歌を集めたもの。一気にたくさんの顔ぶれによる歌が出て来る。お酒も出て宴会になった模様。

 天平十八年の正月に、白雪多に零り、地に積むこと数寸なり。
時に、左大臣橘卿、大納言藤原豊成朝臣また諸王諸臣たちを率て、太上天皇の御在所<中宮の西院>に参入り、仕へまつりて雪を掃く。
ここに詔を降し、大臣参議幷せて諸王は、大殿の上に侍はしめ、諸卿大夫は、南の細殿に侍はしめて、すなはち酒を賜ひ肆宴したまふ。
勅して曰はく、「汝ら緒王卿たち、いささかにこの雪を賦して、おのもおのもその歌を奏せ」とのりたまふ。
 左大臣橘宿禰、詔に応ふる歌一首
降る雪の白髪までに大君に 仕へまつれば貴くもあるか 万3922
*ここに降った白雪のように白髪になるまで大君に仕えることができましたことが、何より貴いことでございます。

 紀朝臣清人、詔に応ふる歌一首
天の下すでに覆ひて降る雪の 光りを見れば貴くもあるか 万3923
*天の下をあまねく覆って降る雪が光り輝いているのを見るのは誠に貴いことです。

 紀朝臣男梶、詔に応ふる歌一首
山の狭そことも見えず一昨日も 昨日も今日も雪の降れれば 万3924
*山の谷が見えないほど一昨日も昨日も今日も雪が降り続いております。

 葛井連諸会詔に応ふる歌一首
新しき年の初めに豊の年 しるすとならし雪の降れるは 万3925
*新年の初めに雪がこんなに降るのは今年が豊かな年になる予兆です。

【似顔絵サロン】橘 諸兄 たちばな の もろえ 684 - 757 奈良時代の皇族・公卿。家持と和歌を通して密な関係を持っていた。家持:いにしへに君の三代経て仕へけり我が大主は七代申さね 万4256















紀 清人 き の きよひと ? - 753 奈良時代の貴族・学者。紀大人の孫。優れた学者として重んじられた。















紀 男梶 き の おかじ ? - ? 奈良時代の貴族。紀麻路の子。















葛井 諸会 ふじい の もろえ ? - ? 奈良時代の貴族。
















〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集四』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=17

コメント

このブログの人気の投稿

万葉集巻第十2219-2222番歌(夕さらずかはづ鳴くなる)~アルケーを知りたい(1477)

万葉集巻22番歌(常にもがもな常処女)~アルケーを知りたい(1242)

万葉集巻第二147‐149番歌(天の原振り放け見れば大君の)~アルケーを知りたい(1266)