万葉集巻第十七3967-3968番歌(うぐひすの来鳴く山吹)~アルケーを知りたい(1504)
▼今回は家持からの悲歌二首に対して、池主が返信した歌二首。格調高い漢詩文の体裁のイントロがつき。こういう文章を書ける人、すごい。「淡交に席を促け、意を得て言を忘る。楽しきかも美しきかも。」というフレーズはいつか真似してみたい。家持が送信した日は二月二十九日、池主の返信が三月二日。このやりとりの時間のリズムも良い。
たちまちに芳音を辱みし、翰苑雲を凌ぐ。
兼に倭詩を垂れ、詞林錦を舒ぶ。
もちて吟じもちて詠じ、能く恋緒をのぞく。
春は楽しぶべく、暮春の風景もとも怜れぶべし。
紅桃灼々、戯蝶は花を廻りて舞ひ、翠柳依々、嬌鶯は葉に隠れて歌ふ。
楽しぶべきかも。
淡交に席を促け、意を得て言を忘る。
楽しきかも美しきかも。
幽襟賞づるに足れり。
あに慮らめや、蘭けい、叢を隔て、琴そん用ゐるところなからむとは。
空しく令節を過ぐさば、物色人を軽みせむかとは。
怨むるところここにあり、黙してやむこと能はず。
俗の語に云はく、藤をもちて錦に続ぐといふ。
いささかに談笑に擬ふらくのみ。
山狭に咲ける桜をただ一目 君に見せてば何をか思はむ 万3967
*山間に咲いている桜を一目で良いから貴方様に見てもらいたい。そしたら何の心残りがあるでしょう。
うぐひすの来鳴く山吹うたがたも 君が手触れず花散らめやも 万3968
沽洗の二日、掾大伴宿禰池主。
*ウグイスがやってきて鳴いています。貴方様が手を触れてもないのに、山吹の花が散ることはないでしょう。
【似顔絵サロン】
大伴家持(718-785)と同時代の人びと:橘 諸兄 たちばな の もろえ 684 - 757 奈良時代の皇族・公卿。吉備真備と玄昉が政治を補佐。
〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集四』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=17
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