万葉集巻第十七3991-3992番歌(思ふどちかくし遊ばむ)~アルケーを知りたい(1513)

▼今回は、布勢の水海を詠った長歌と短歌。Wikipediaによると「布勢水海(ふせのみずうみ)は、かつて 富山県氷見市南西部に存在した潟湖」で「湖岸には至るところに小さな湾や岬があって、風光絶佳であった」という。家持一行は、馬を並べて陸から風景を楽しんだ後、舟を出した。そして「沖辺を漕ぎながら岸辺を見ると渚ではあぢ鴨の群が騒いでおり、島の周りには木々が花を咲かせている。ここの眺めはまことに目に賑やか」と喜び、この仲間同士でまた見に来ような、と約束する。風景も人も全部よき。

 布勢の水海に遊覧する賦一首 幷せて短歌 この海は射水の郡の古江の村に有り
もののふの 八十伴の男の
思ふどち 心遣らむと
馬並めて うちくちぶりの
白波の 荒磯に寄する
渋谿の 崎た廻り
麻都太江の 長浜過ぎて
宇奈比川 清き瀬ごとに
鵜川立ち か行きかく行き
見つれども そこも飽かにと
布勢の海に 舟浮け据ゑて
沖辺漕ぎ 辺に漕ぎ見れば
渚には あぢ群騒き
島廻には 木末花咲き
ここばくも 見のさやけきか
玉櫛笥 二上山に
延ふ蔦の 行きは別れず
あり通ひ いや年のはに
思ふどち かくし遊ばむ
今も見るごと 万3991
*気の合った仲間で二上山を廻るのは楽しい。それに飽き足らず舟で海に出ると、こんなにも眺めが素晴らしいのかと驚く。これからも毎年、気の合う仲間でこうやって遊びましょう。

布勢の海の沖つ白波あり通ひ いや年のはに見つつ偲はむ 万3992
 右は、守大伴宿禰家持作る。四月の二十四日
*布勢の海の沖の白波のように毎年重ねて眺めましょう。

【似顔絵サロン】橘奈良麻呂の乱に関係した人々:安宿王 あすかべおう ? - ? 奈良時代の皇族。長屋王の五男。757年の乱の後、佐渡に流罪。印南野の赤ら柏は時はあれど 君を我が思ふ時はさねなし 万4301
















〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集四』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=17

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