万葉集巻第十七3993-3994番歌(白波の寄せ来る玉藻)~アルケーを知りたい(1514)

▼前回は、布勢水海を「思ふどち」と一緒に遊覧した家持の歌で、今回は池主の歌。長歌と短歌のセットになっているのは同じ。違いは家持が「併せて短歌」、池主が「併せて一絶」。池主が五言絶句の絶を使って漢詩風味を出している。

 敬みて布勢の水海に遊覧する賦に和ふる一首 幷せて一絶
藤波は 咲きて散りにき
卯の花は 今ぞ盛りと
あしひきの 山にも野にも
ほととぎす 鳴きし響めば
うち靡く 心もしのに
そこをしも うら恋しみと
思ふどち 馬打ち群れて
携はり 出で立ち見れば
射水川 港の洲鳥
朝なぎに 潟にあさりし
潮満てば 妻呼び交す
羨しきに 見つつ過ぎ行き
渋谿の 荒磯の崎に
沖つ波 寄せ来る玉藻
片縒りに 縵に作り
妹がため 手に巻き持ちて
うらぐはし 布勢の水海に
海人舟に ま楫掻い貫き
白栲の 袖振り返し
率ひて 我が漕ぎ行けば
乎布の崎 花散りまがひ
渚には 葦鴨騒ぎ
さざれ波 立ちても居ても
漕ぎ廻り 見れども飽かず
秋さらば 黄葉の時に
春さらば 花の盛りに
かもかくも 君がまにまと
かくしこそ 見も明らめめ
絶ゆる日あらめや 万3993
*春も秋も、立っても座っていても見飽きない布勢の風景。貴方様と一緒に眺めて楽しむ日が絶えることなどあるはずがありません。

白波の寄せ来る玉藻 世の間も継ぎて見に来む清き浜びを 万3994
 右は、掾大伴宿禰池主作る。四月の二十六日に追ひて和ふ
*白波が寄せて持ってくる玉藻。この世にいる間、絶えることなく見に来ましょう、この清らかな浜辺の玉藻を。

【似顔絵サロン】757年、橘奈良麻呂の乱に関係した人々:黄文王 きぶみおう ? - 757 長屋王の子。橘奈良麻呂の乱に連座。久奈多夫礼(くなたぶれ=愚かな者)と改名させられた後、杖で打たれる拷問で刑死。
















〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集四』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=17

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