万葉集巻第十七4008-4010番歌(なでしこが花の盛りに)~アルケーを知りたい(1519)

▼今回は、都に報告に行った家持宛に、越中にいる池主からの和歌。

 たちまちに京に入らむとして懐を述ぶる作を見るに、生別は悲しぐ、断腸万廻にして、怨緒禁めかたし。いささかに所心を奉る一首 幷せて二絶
あをによし 奈良を来離れ
天離る 鄙にはあれど
我が背子を 見つつし居れば
思ひ遣る こともありしを
大君の 命畏み
食す国の 事取り持ちて
若草の 足結ひ手作り
群鳥の 朝立ち去なば
後れたる 我れや悲しき
旅に行く 君かも恋ひむ
思ふそら 安くあらねば
嘆かくを 留めもかねて
見わたせば 卯の花山の
ほととぎす 音のみし泣かゆ
朝霧の 乱るる心
言に出でて 言はばゆゆしみ
礪波山 手向の神に
幣奉り 我が祈ひ禱まく
はしけやし 君が直香を
ま幸くも ありた廻り
月立たば 時もかはさず
なでしこが 花の盛りに
相見しめとぞ 万4008
*礪波山の手向の神に幣を奉って、なでしこの花の盛りの時には貴方様とお目にかかれますようにと祈りました。

玉桙の道の神たち賄はせむ 我が思ふ君をなつかしみせよ 万4009
*道の神に祈りを捧げますので、私が大切に思っている方をお守りください。

うら恋し我が背の君はなでしこが 花にもがもな朝な朝な見む 万4010
 右は、大伴宿禰池主が報へ贈りて和ふる歌。五月の二日
*恋しく思う貴方様が撫子の花であれば毎朝見れますのに。

【似顔絵サロン】橘奈良麻呂の乱に関係した人々:多治比 広足 たじひ の ひろたり 681 - 760 奈良時代の公卿。757年、橘奈良麻呂の乱に与したとして、中納言を解任。一族からは多治比犢養・礼万呂・鷹主らの処罰者を出したことを咎められた。以降は邸宅に籠もった。
















〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集四』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=17

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