万葉集巻第十七4012-4015番歌(心には緩ふことなく)~アルケーを知りたい(1521)

▼猟が大好きな家持がそれは大事にしていた鷹を鷹使が勝手に持ち出した揚げ句逃がしてしまう、それに驚き、怒り、探し続けても見つからない、しょんぼりした気持ちになっているとある晩、夢でお告げがある。長歌で状況を説明した後、今回の4首で見失った後の日々の気持ちを詠っている。後書きにも背景の説明がある。お告げの通りに見つかったら幸いだが、それは書かれていない。

矢形尾の鷹を手に据ゑ三島野に 猟らぬ日まねく月ぞ経にける 万4012
*矢形尾の鷹を連れて三島野で猟をしない日が続くうちに月も変わった。

二上のをてもこのもに網さして 我が待つ鷹を夢に告げつも 万4013
*二上のあちこちに網を張って待っていた鷹が見つかるが夢でお告げがあった。

松反しひにてあれかもさ山田の 翁がその日に求めあはずけむ 万4014
*老いぼれたのか山田の爺が私の大切な鷹を無断で持ち出したあげく見失ってしまった。

心には緩ふことなく須賀の山 すかなくのみや恋ひわたりなむ 万4015
 右は、射水の郡の古江の村にして蒼鷹を取獲る。
形容美麗しくして、雉を鷙ること群に秀れたり。
時に、養吏山田史君麻呂、調試節を失ひ、野猟候に乖く。
博風の翅、高く翔りて雲に匿る。
腐鼠の餌、呼び留むるに験靡し。
ここに羅網を張り設けて、非常を窺ひ、神祇に奉幣して、不虞を恃む。
ここに夢の裏に娘子あり。
喩へて曰はく、「使君、苦しき念を作して空しく精神を費やすこと、勿。
放逸れたるその鷹は、獲り得むこと、幾時もあらじ」といふ。
須臾にして覚き寤め、懐に悦びあり。
よりて、恨みを却く歌を作り、もちて感信を旌す。
守大伴宿禰家持 九月の二十六日に作る
*めったにない優れた鷹を失って、しょげかえるばかり。

【似顔絵サロン】橘奈良麻呂の乱に関係した人々:多治比 国人 たじひ の くにひと ? - ? 奈良時代の官吏。757年の乱の時期は遠江守。乱の後、尋問を受けた結果、伊豆国へ流罪。八十国は難波に集ひ船飾り我がせむ日ろを見も人もがも 万4329
















〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集四』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=17

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