万葉集巻第十七4029-4031番歌(珠洲の海に朝開きして)~アルケーを知りたい(1525)
▼今回は第18巻の最後の三首。4029番は早朝の海に月が照っている風景の歌。家持が稲の出来栄えを検分する地域巡行中の歌。現場を回る仕事をしていたのだ、家持は。出挙とは、役所が農民に稲を貸し付け、収穫時に利子をつけて回収する仕組み。万葉時代から稲は経済基盤を担っていた。4030番は鶯の初鳴きを待つ歌で、こうやってみると、当時の人は鶯が鳴いたといって喜び、鳴かないと言って嘆いて、まあ、遊んでいたのだ。何かにつけて遊ぶマインド、今日はマネして実行するぞ。4031番の最後の「汝」が誰を言っているのか分からないのが、余韻、良いんだ。
珠洲の郡より舟を発し、太沼の郡に還る時に、長浜の湾に泊り、月の光を仰ぎ見て作る歌一首
珠洲の海に朝開きして漕ぎ来れば 長浜の浦に月照りにけり 万4029
右の件の歌詞は、春の出挙によりて、諸郡を巡行し、時に当りて、属目して作る。大伴宿禰家持
*珠洲の海を早朝舟でやって来ると、長浜の浦で月が輝いていました。
鶯の晩く哢くを恨むる歌一首
うぐひすは今は鳴かむと片待てば 霞たなびき月は経につつ 万4030
*ウグイスが今にも鳴くだろう、と待っているうちに霞がたなびいて月も傾いています。
造酒の歌一首
中臣の太祝詞言言ひ祓へ 贖ふ命も誰がために汝れ 万4031
右は、大伴宿禰家持作る。
*中臣氏は太祝詞言を唱え、お祓いをして、長命を祈ります。誰のためかというと、それは貴方様のためです。
【似顔絵サロン】橘奈良麻呂の乱に関係した人々:大伴 古麻呂 おおとも の こまろ ? - 757 奈良時代の貴族。橘奈良麻呂の乱に連座。杖で打たれる拷問で刑死。
〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集四』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=17
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