万葉集巻第十八4036-4039番歌(音のみに聞きて)~アルケーを知りたい(1527)

▼今は見られない絶景で有名だったという布勢水海をめぐる歌。家持おススメの場所。都から来た人にはぜひ見てもらわないと、という気持ち。それに応えて、田辺福麻呂が、それほどのススメでしたら、見なければなりませんな、と詠う。福麻呂は景色にはそれほど興味がないけど、家持がワイワイ言うからしょうがないなという気配も漂う。もともと家持はアウトドア派やろ、私はインドア派なんだよな、と福麻呂は思っていた、と想定すると味わいが増す。

 時に、明日に布勢の水海に遊覧せむことを期ひ、よりて、懐を述べておのもおのも作る歌
いかにある布勢の浦ぞもここだくに 君が見せむと我れを留むる 万4036
 右の一首は田辺史福麻呂。
*どんなところなのでしょう、布勢の浦は。貴方様が見せようとしてこれほど私をお引き止めになるのは。

乎布の崎漕ぎた廻りひねもすに 見とも飽くべき浦にあらなくに 一には「君が問はすも」といふ 万4037
 右の一首は守大伴宿禰家持。
*例えば、乎布の崎から舟で廻りながら一日中見ても見飽きない浦なのですよ。

玉櫛笥いつしか明けむ布勢の海の 浦を行きつつ玉も拾はむ 万4038
*いつになったら夜が明けるのでしょう。待ちきれないから、布勢の海の浦を歩いて小石や貝がらを拾いましょう。

音のみに聞きて目に見ぬ布勢の浦を 見ずは上らじ年は経ぬとも 万4039
*噂で聞くだけで実際に見たことがない布勢の浦ですから、このさい見ないでは京に上れませんよ。たとえ年が変わっても。

【似顔絵サロン】橘奈良麻呂の乱に関係した人々:大伴 古慈斐 おおとも の こしび 695 - 777 奈良時代の公卿。藤原不比等が人物を見込んで娘を古慈斐の妻とした。757年、橘奈良麻呂の乱に連座し、任国だった土佐国へ流罪。770年、罪を赦されて復位し大和守。
















〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集四』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=18

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