万葉集巻第十八4061-4065番歌(夏の夜は道たづたづし)~アルケーを知りたい(1533)
▼最初の2首は舟で移動するときの歌。次の2首は橘卿を讃える歌。最後の1首は家を恋しく思ふ歌。時々の感慨を和歌にすると型が同じだけによくまとまる。内容はそれぞれ違うけれど。4065番の「つばらつばらに」という言葉が良い。作者の山上臣は憶良の子という説がある、と後書きに書かれている。歌と同じく後書きにある情報も見逃せない。
堀江より水脈引きしつつ御船さす 賤男のともは川の瀬申せ 万4061
*堀江から水路を進む御船の船頭たちは、川の浅瀬に注意して進みなさい。
夏の夜は道たづたづし船に乗り 川の瀬ごとに棹さし上れ 万4062
右の件の歌は、御船綱手をもちて江を泝り、遊宴する日に作る。
伝誦する人は田辺史福麻呂ぞ。
*夏の夜に道を進むのは心もとないので、船に乗って瀬ごとに棹を入れて上りなさい。
後に橘の歌に追ひて和ふる歌二首
常世物この橘のいや照りに 我ご大君は今も見るごと 万4063
*常世から来た物というこの橘が輝くように光輝く大君でありますように。今、みなでお見受けするように。
大君は常盤にまさむ橘の 殿の橘ひた照りにして 万4064
右の二首は、大伴宿禰家持作る。
*大君はいついつまでも変わらずにいらっしゃるでしょう。橘の殿の橘が光輝いているように。
射水の郡の駅の館の屋の柱に題著す歌一首
朝開き入江漕ぐなる楫の音の つばらつばらに我家し思ほゆ 万4065
右の一首は、山上臣作る。
名を審らかにせず。
或いは憶良大夫が男といふ。
ただし、その正しき名いまだ詳らかにあらず。
*朝早くから入江を漕ぐ舟の楫の音がしきりに聞こえるように、私は家のことを思っています。
【似顔絵サロン】橘奈良麻呂の乱に関係した人々:小野 東人 おの の あずまひと ? - 757 奈良時代の貴族。740年の広嗣の乱に連座し杖罪100回、伊豆国へ流罪。757年の乱に連座し杖で打たれる拷問の末、獄死。
〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集四』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=18
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