万葉集巻第十八4128-4131番歌(草枕旅の翁と思ほして)~アルケーを知りたい(1551)
▼池主が家持から贈られたプレゼントに対するお礼の戯歌。例のごとく漢文調。これはいったい何だろうかと思ったら、針袋である。これは私を旅に出た翁だと思って贈ってきたものだから、何か縫うものが要る、で始まる四首。この歌への返答の歌は脱漏して見つからない、という後書きも冗談っぽい。これも古の方々のふざけ方、と思ふ。
越の国の掾大伴宿禰池主が来贈する戯歌四首
たちまちに恩賜を辱みし、驚欣すでに深し。
心中笑を含み、独り座してやくやくに開けば、表裏同じきことあらず。
相違何しかも異なる。
所由を推量るに、いささめに策をなせるか。
明らかに知りて言を加ふること、あに他意あらめや。
凡そ本物を貿易することは、その罪軽きことあらず。
正贓倍贓、急けく幷満すべし。
今し風雲を勒して、徴使を発遣す。
早速に返報せよ、延廻すべくあらず。
勝宝元年の十一月の十二日物の貿易せらえたる下吏謹みて貿易人を断宮司の庁下に訴ふ。
別に曰さく、可怜の意、黙止をること能はず。
いささかに四詠を述べ、睡覚に准擬せむと。
草枕旅の翁と思ほして 針ぞ賜へる縫はぬ物もが 万4128
*旅をしている翁と思われたのか、針を貰ったので、何か縫う物が欲しいです。
針袋取り上げ前に置き返さへば おのともおのや裏も継ぎたり 万4129
*針袋を手に取ってよく見ると、何と裏地までついています。
針袋帯び続けながら里ごとに 照らひ歩けど人もとがめず 万4130
*針袋を腰につけて見せびらかしながら里から里を歩いたが咎める人はいません。
鶏が鳴く東をさしてふさへしに 行かむと思へどよしもさねなし 万4131
右の歌の返し報ふる歌は、脱漏して探ね求むること得ず。
*針袋にふさわしい鶏が鳴く東の方へ行ってみようかと思うが、そのきっかけがありません。
【似顔絵サロン】藤原仲麻呂の乱に関係した人々:藤原 朝狩 ふじわら の あさかり ? - 764天平宝字8年10月17日 奈良時代の公卿。藤原仲麻呂の四男。764年、藤原仲麻呂の乱で官軍から斬殺。
〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集四』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=18
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