万葉集巻第十八4134-4138番歌(我が背子が琴取るなへに)~アルケーを知りたい(1553)
▼今回は家持が宴の会で詠んだ歌の数々。
4134番は、雪が積もった月夜に開かれた宴会で、都に残してきた妻に会いたい気持ちを詠んだ歌。万葉時代の人は寒さにめちゃ強かったようだ。雪だよ、月が出ている夜だよ。
4135番は、琴の名手のお宅で開かれた宴での歌。演奏は内省的なものだったようだ。
4136番は、宴に参加している皆さまの長寿を祈る歌。人が集まるところでは寿の歌、皆の幸いを祈るポジティブな言葉がふさわしいと分かる。
4137番は気の置けない友人、広繩と向かい合って、こうして笑い合える時間は貴重だよなと言う歌。
4138番は趣ががらっと代わって、仕事先で雨に降られたから今雨宿り中、という妻への連絡の歌。雨に濡れたくない家持、家持の言いつけで雨に濡れながら歌を運ぶ奴。雨宿り先は「郡の主帳」宅なので、そのまま宴会になっているに違いない。
宴席にして雪月梅花を詠む歌一首
雪の上に照れる月夜に梅の花 折りて送らむはしき子もがも 万4134
右の一首は、十二月に大伴宿禰家持作る。
*雪の夜、月に照らし出された梅の花を折り取る。それをプレゼントするかわいい妻がここにいてくれたらなあ。
我が背子が琴取るなへに常人の 言ふ嘆きしもいやしき増すも 万4135
右の一首は、少目秦伊美吉石竹が館の宴にして守大伴宿禰家持作る。
*貴方様が琴を手に取るやいなや、世間の人の嘆きが音になって溢れてきます。
天平勝宝二年の正月の二日に、国庁にして饗を諸の郡司等に給ふ宴の歌一首
あしひきの山の木末のほよ取りて かざしつらくは千年寿くとぞ 万4136
右の一首は、守大伴宿禰家持作る。
*山の樹木の下にある「ほよ」をかんざしにしたのは、皆さまの長寿をお祈りしているからです。
判官久米朝臣広繩が館にして宴する歌一首
正月立つ春の初めにかくしつつ 相し笑みてば時じけめやも 万4137
同じき月の五日に、守大伴宿禰家持作る。
*正月の初春にこのように顔を合わせて笑い合えるのはじつに時を得たことです。
墾田地を検察する事によりて、礪波の郡の主帳多治比部北里が家に宿る。
時に、たちまちに風雨起り、辞去すること得ずして作る歌一首
藪波の里に宿借り春雨に 隠りつつむと妹に告げつや 万4138
二月の十八日に、守大伴宿禰家持作る。
*藪波の里のお宅で降り出した春雨が止むのを待っていると妻に伝えてください。
【似顔絵サロン】多治比部 北里 たじひべ の きたさと ? - ? 奈良時代の官吏。 越中礪波(となみ)郡の主帳。750年、大伴家持が墾田地検察のため北里の家に立ち寄ったときに作った歌が4138番。
〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集四』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=18
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