万葉集巻第十九4192-4196番歌(ほととぎす鳴く羽触れにも)~アルケーを知りたい(1569)

▼4192番は家持が欲張ってホトトギスと藤の花の両方を詠んだ長歌。「かそけき野辺」とか「はろはろに鳴く」などの言葉が良き。「引き攀じて袖に扱入れつ 染めば染むとも」は、ますらをぶりだと思ふ。
4193番は、ホトトギスが鳴く時にちょっと羽を震わせるだけで藤の花が散る、これは藤の盛りが過ぎたのだろう、と詠う。時を感じさせる歌。
4194番からの三首は、ホトトギスの鳴くのが遅い!と家持が気をもむ歌。

 霍公鳥幷せて藤の花を詠む一首 幷せて短歌
桃の花 紅色に
にほひたる 面輪のうちに
青柳の 細き眉根を
笑み曲がり 朝顔見つつ
娘子あが 手に取り持てる
まそ鏡 二上山に
木の暗の 茂き谷辺を
呼び響め 朝飛び渡り
夕月夜 かそけき野辺に
はろはろに 鳴くほととぎす
立ち潜くと 羽触れに散らす
藤波の 花なつかしみ
引き攀じて 袖に扱入れつ
染めば染むとも 万4192
*藤の花が見事なので、折り取って袖に入れました。色が移っても構わないと思って。

ほととぎす鳴く羽触れにも散りにけり 盛り過ぐらし藤波の花 一には「散りぬべみ袖に扱入れつ藤波の花」といふ  万4193
 同じき九日に作る。
*ほととぎすが鳴いて羽を震わせるだけでも散るのを見ると藤の花は盛りを過ぎたらしい。

 さらに、霍公鳥の哢くこと晩きを恨むる歌三首
ほととぎす鳴き渡りぬと告ぐれども 我れ聞き継がず花は過ぎつつ 万4194
*ホトトギスが鳴きながら飛んで行ったと人は教えてくれるが、私は聞いてないまま花の時期が過ぎている。

我がここだ偲はく知らにほととぎす いづへの山を鳴きか越ゆらむ 万4195
*私がこんなにホトトギスを待っているというのに、どこの山を鳴きながら越えているのだろう。

月立ちし日より招きつつうち偲ひ 待てど来鳴かぬほととぎすかも 万4196
*月が改まったら来てくれないものかと待っているけど、なかなか来ないホトトギスだよ。

【似顔絵サロン】内蔵 縄麻呂 くら の なわまろ/つなまろ ? - ? 奈良時代後期の官人。我が背子が国へましなばほととぎす 鳴かむ五月は寂しけむかも 万3996
















〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集四』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=19

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