万葉集巻第十九4199-4202番歌(藤波の影なす海の底清み)~アルケーを知りたい(1570)
▼今回も風景が目に浮かぶような四首。今はもうなくなって久しいという絶景の地「布勢の水海」を家持らが舟で廻りながら詠った作品。
4199番は、海の底に沈んでいる石を詠ったもの。水が清いので石が玉に見えるという。分かる気になるのが不思議。
4200番は、前の歌の「海の底」を受けながら、藤の花をかんざしにする、という風情を詠う内蔵縄麻呂の歌。
4201番は、風景が思ったより良くて、藤の花を眺めて一晩過ごしそう、という誉め方の歌。
4202番は、ここに来た自分達を見た人は、観光客ではなく漁師と思うかも、という歌。
ゲストの三名がホストの家持の勧めに応じて和歌を作れるのがすごい、と思ふ。
十二日に、布勢の水海に遊覧するに、多祜湾に舟泊りす。
藤の花を望み見て、おのもおのも懐を述べて作る歌四首
藤波の影なす海の底清み 沈く石をも玉とぞ我が見る 万4199
守大伴宿禰家持
*藤の花を映す海は底まで澄み渡り、私の目には沈んでいる石まで玉のように見える。
多祜の浦の底さへにほふ藤波を かざして行かむ見ぬ人のため 万4200
次官内蔵忌寸繩麻呂
*多祜の浦の底まで照り輝く藤の花をかざして参りましょう、この見事な風景を見ていない人のために。
いささかに思ひて来しを多祜の浦に 咲ける藤見て一夜経ぬべし 万4201
判官久米朝臣広繩
*ちょっとだけのつもりで来た多祜の浦ですが、咲いている藤の花を見ていると一夜を過ごしそうです。
藤波を仮廬に作り浦廻する 人とは知らに海人とか見らむ 万4202
久米朝臣継麻呂
*藤の花で小屋を作り浦を舟で回れば観光に来た人とは見られず、漁師と見られるかも知れませんね。
【似顔絵サロン】久米 広縄 くめ の ひろただ/ひろつな ? - ? 奈良時代中期の歌人・官人。越中守・家持のもとで和歌の筆録を行い『万葉集』巻18となった。
久米 継麻呂 くめ の つぎまろ ? - ? 奈良時代の官吏。750年、家持らと布勢水海を遊覧して歌を詠んだ。4202番。
〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集四』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=19
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