万葉集巻第十九4214-4216番歌(世間の常なきことは)~アルケーを知りたい(1575)

▼今回の4214番は親戚の死去を知った家持の挽歌。「立つ霧の 失せぬるごとく 置く露の 消ぬるがごとく」のフレーズが良い。
たはことか 人の言ひつる およづれか 人の告げつる」のフレーズもリズムも響きも良い。最後に「遠音にも 聞けば悲しみ にはたづみ 流るる涙 留めかねつも」と結ぶ。
4215番の長歌を短縮した短歌
4216番は前の長歌と短歌をふまえた娘婿への励まし。

 挽歌一首 幷せて短歌
天地の 初めの時ゆ
うつそみの 八十伴の男は
大君に まつろふものと
定まれる 官にしあれば
大君の 命畏み
鄙離る 国を治むと
あしひきの 山川へだて
風雲に 言は通へど
直に逢はず 日の重なれば
思ひ恋ひ 息づき居るに
玉桙の 道来る人の
伝て言に 我れに語らく
はしきよし 君はこのころ
うらさびて 嘆かひいます
世間の 憂けく辛けく
咲く花も 時にうつろふ
うつせみも 常なくありけり
たらちねの 御母の命
何しかも 時しはあらむを
まそ鏡 見れども飽かず
玉の緒の 惜しき盛りに
立つ霧の 失せぬるごとく
置く露の 消ぬるがごとく
玉藻なす 靡き臥い伏し
行く水の 留めなねつと
たはことか 人の言ひつる
およづれか 人の告げつる
梓弓 爪引く夜音の
遠音にも 聞けば悲しみ
にはたづみ 流るる涙
留めかねつも 万4214
*(娘聟の母親の逝去を聞いて)知らせを聞いて悲しく流れる涙が止まりません。

 反歌二首
遠音にも君が嘆くと聞きつれば 哭のみし泣かゆ相思ふ我れは 万4215
*遠くにいても貴方様が嘆いておられると聞きました。同じ思いですので、私も涙しております。

世間の常なきことは知るらむを 心尽すなますらをにして 万4216
 右は、大伴宿禰家持、聟の南の右大臣家の藤原二郎が慈母を喪ふ患へを弔ふ。五月の二十七日。
*世の中が常なきことは承知のこと、気力が尽きないようにしてください、男なのですから。

【似顔絵サロン】藤原仲麻呂の乱に関係した人々:村国 子老 むらくに の こおゆ ? - ? 奈良時代の官人。764年、藤原仲麻呂の乱の後、位階剥奪。
















〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集四』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=19

コメント

このブログの人気の投稿

万葉集巻第十2219-2222番歌(夕さらずかはづ鳴くなる)~アルケーを知りたい(1477)

万葉集巻第十八4070-4072番歌(一本のなでしこ植ゑし)~アルケーを知りたい(1535)

万葉集巻第三417‐419番歌(岩戸破る手力もがも)~アルケーを知りたい(1298)