万葉集巻第十九4217-4219番歌(卯の花を腐す長雨の)~アルケーを知りたい(1576)
▼4217番の霖雨(りんう)とは長雨のこと。ながあめは和語らしい響き、りんうは漢語の響きがする。雨続きで家持はよほど人恋しい気持ちになっていたのだろう。増水した川の流れで集まった木屑を人に見立てて、寄り合いたいと思うくらいだから。
4218番は、表に出していない思いを詠っている。それが何だかは分からない。
4219番は、秋風が吹く前に花をつけた萩を見て、待ちきれないのだろう、と詠っている。「吹かむを待たばいと遠みかも」に、都に帰りたい家持の心境が伝わってくる。
霖雨の晴れぬる日に作る歌一首
卯の花を腐す長雨の始水に 寄る木屑なす寄らむ子もがも 万4217
*卯の花を腐らせるという長雨が始まり、川が増水して木屑が集まっている。私にも寄り添ってくれる人がいたらなあ。
漁夫の火花を見る歌一首
鮪突くと海人の燭せる漁り火の 穂にか出ださむ我が下思ひを 万4218
右の二首は五月。
*鮪突き漁をする海人の漁り火のように、はっきり出てしまうのだろうか、私の思いは。
我がやどの萩咲きにけり秋風の 吹かむを待たばいと遠みかも 万4219
右の一首は、六月の十五日に、萩の早花を見て作る。
*我が家の萩が咲いた。秋風が吹くのを待っているとずっと先のことになるからだろうか。
【似顔絵サロン】藤原仲麻呂の乱に関係した人々:村国 島主 むらくに の しまぬし ? - 764天平宝字8年10月19日 奈良時代の官人。764年、藤原仲麻呂の乱では内応し朝廷に帰順しようとしたが孝謙上皇側の使者に間違って誅殺された。766年、名誉回復。
〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集四』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=19
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