万葉集巻第十九4222-4225番歌(このしぐれいたくな降りそ)~アルケーを知りたい(1578)
▼今回の四首は、風物を詠いながら、人への思いを描く歌。誰が、誰に、何を言っているのか、を確認してから、もう一度歌を眺める。いつもの自分がいかに無粋なコミュニケーションしかできてないか、自覚。
4222番は、広繩が秋の雨に呼びかけるのを見て、読者が感興を呼び起こす、という趣向。広繩が妻へ。
4223番は、家持が広繩の歌を受けながら、収めるという格好の歌。この二首はセット。家持が広繩へ。
4224番は、状態が続くという意味で前の二首と共通。藤原皇后が天皇へ(?)。
4225番は、黄葉つながり。家持が秦伊美吉石竹へ 。
九月の三日に宴する歌二首
このしぐれいたくな降りそ我が妹子に 見せむがために黄葉取りてむ 万4222
右の一首は掾久米朝臣広繩作る。
*時雨よ、あまり強く降らないでおくれ。私の妻に見せるために黄葉を取っているのだから。
あをによし奈良人見むと我が背子が 標めけむ黄葉地に落ちめやも 万4223
右の一首は、守大伴宿禰家持作る。
*奈良の人に見せようと私の友達が標をつけた黄葉が地面に散ることなどありましょうか。
朝霧のたなびく田居に鳴く雁を 留め得むかも我がやどの萩 万4224
右の一首の歌は、吉野の宮に幸す時に、藤原皇后作らす。
ただし、年月いまだ審詳らかにあらず。
十月の五日に、河辺朝臣東人、伝誦してしか伝ふ。
*朝霧がたなびく田居で鳴いている雁をそのまま留めおくことができるだろうか、我が家の萩は。
あしひきの山の黄葉にしづくあひて 散らむ山道を君が越えまく 万4225
右の一首は、同じき月の十六日に、朝集使少目秦伊美吉石竹を餞する時に、守大伴宿禰家持作る。
*山の黄葉が雫と一緒に散る山道を貴方様が越えていらっしゃるのでしょう。
【似顔絵サロン】藤原仲麻呂の乱に関係した人々:板持 鎌束 いたもち の かまつか ? - ? 奈良時代の貴族。764年、藤原仲麻呂の乱で獄が囚人であふれたため、別件で拘束されていた鎌束は近江国に移された。
〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集四』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=19
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