万葉集巻第十九4234-4237番歌(鳴く鶏はいやしき鳴けど)~アルケーを知りたい(1581)

▼4234番が生まれる背景はこうだ。縄麻呂が自邸で宴会を開いた。その日はすごい雪。にも拘わらず家持や参加者は雪漕ぎしながらやって来て、宴会は盛り上がり、鶏の鳴き声が聞こえてきた。それを聞いた繩麻呂が、家持を引き留めるために、まだ雪が降っているので帰れませんよ、と詠う。それに家持がそうなんですよねーと和したのが4234番。
4235番は、家持の歌を聞いた繩麻呂がこんどは古歌を持ち出してこの日の宴会の喜びを表現する。
この宴会に来た人は、過去の歌をよく知っているので、おお、そうじゃそうじゃとなったのだろう。

 守大伴宿禰家持が和ふる歌一首
鳴く鶏はいやしき鳴けど降る雪の 千重に積めこそ我が立ちかてね 万4234
*鶏はさかんに鳴くけれども、雪がどんどん降り積もるので、私は立ち去りかねているのです。

 太政大臣藤原家の県犬養命婦、天皇に奉る歌一首
天雲をほろに踏みあだし鳴る神も 今日にまさりて畏けめやも 万4235
 右の一首、伝誦するは掾久米朝臣広繩。
*天の雲を蹴散らすほどの雷神でありましょうとも、今日に勝って畏れ多いことがありましょうか。

【似顔絵サロン】県犬養 三千代/県犬養命婦/橘三千代 あがた の いぬかい の みちよ 665 - 733 奈良時代前期の女官。美努王の妻。離別後、藤原不比等の後妻。
















〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集四』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=19

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