万葉集巻第十九4242-4244番歌(住吉に斎く祝が神言と)~アルケーを知りたい(1584)
▼遣唐使は必ず往復できる、というものではなかった。今回は750年の第12次遣唐使の送別会の歌三首。
4242番の結びに「悲しみ」があるとおり。二度と会えないかも知れない別れの会。
4243番は、場を明るくしようとする内容。
4244番は出発の時が近づいている、慣れ親しんだ人とお別れの時が近づいていると詠う。
▼4242番の作者・藤原仲麻呂は、この送別会の十数年後、藤原仲麻呂の乱を起こす。
4244番の作者・藤原清河は、行ったきりで帰国できないまま。
4243番の作者・多治比土作は、乱の後も朝廷で政に務めた。
大納言藤原家にして入唐使等を餞する宴の日の歌一首 すなはち、主人卿作る
天雲の行き帰りなむものゆゑに 思ひぞ我がする別れ悲しみ 万4242
*雲のように行けばすぐお帰りになるのに、お別れは悲しいものです。
民部少輔多治比真人土作が歌一首
住吉に斎く祝が神言と 行くとも来とも船は早けむ 万4243
*住吉神社のお告げによると、往来とも船はすいすいと進むそうです。
大使藤原朝臣清河が歌一首
あらたまの年の緒長く我が思へる 子らに恋ふべき月近づきぬ 万4244
*これまで長い間親しんできた方々を恋しいと思う月が近づきました。
【似顔絵サロン】藤原 仲麻呂 ふじわら の なかまろ / 恵美押勝 706 - 764 奈良時代の公卿。藤原武智麻呂の次男。
多治比 土作 たじひ の はにつくり/はにし ? - 771 奈良時代の公卿。左大臣・多治比嶋の孫。宮内卿・多治比水守の子。
藤原 清河 ふじわら の きよかわ ? - ? 奈良時代の公卿。藤原北家の祖・房前の四男。750年、第12次遣唐使の大使。阿倍仲麻呂と共に帰国しようとするも、叶わぬまま。
〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集四』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=19
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