万葉集巻第十九4245-4247番歌(沖つ波辺波な越しそ)~アルケーを知りたい(1585)
▼今回も遣唐使の無事の往復を祈る歌三首。毎回無事に往復できるわけではないリスクの多い船旅。もしかすると今生の別れになるかも知れない。
4245番は「荒き風波にあはず 平けく率て帰りませ もとの朝廷に」と、帰国再会を祈る長歌。
4246番は、前の長歌をコンパクトにまとめた短歌。とにかく港まで無事に戻って来てね、と詠う。
4247番は、出発が近づいた本人が母親に別れを惜しむ歌。
天平五年に入唐使に贈る歌一首 幷せて短歌 作者不詳
そらみつ 大和の国
あをによし 奈良の都ゆ
おしてる 難波に下り
住吉の 御津に船乗り
直渡り 日の入る国に
任けらゆる 我が背の君を
かけまくの ゆゆし畏き
住吉の 我が大御神
船の舳に 領きいまし
船艫に み立たしまして
さし寄らむ 磯の崎々
漕ぎ泊てむ 泊り泊りに
荒き風 波にあはず
平けく 率て帰りませ
もとの朝廷に 万4245
*住吉の我が大御神、どうぞ船にお立ちになって、荒い風や波に逢わず無事に皆を率いて朝廷に無事にお戻りになってください。
反歌一首
沖つ波辺波な越しそ君が船 漕ぎ帰り来て津に泊つるまで 万4246
*沖の波も海岸の波も越えて貴方様の船が無事に港に戻って停泊するまでお祈りしています。
阿部朝臣老人、唐に遣はさえし時に、母に奉る悲別の歌一首
天雲のそきへの極み我が思へる 君に別れむ日近くなりぬ 万4247
*天雲の果てまでも思っている母上とお別れする日が近くなりました。
右の件の歌、伝誦する人は越中の大目高安倉人種麻呂ぞ。
ただし、年月の次は、聞きし時のまにまにここに載す。
【似顔絵サロン】阿倍 老人 あべ の おゆひと ? - ? 伝未詳。遣唐使の随員。
高安 種麻呂 たかやす の たねまろ ? - ? 奈良時代の官吏。
〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集四』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=19
コメント
コメントを投稿