万葉集巻第十九4269-4272番歌(よそのみに見ればありしを)~アルケーを知りたい(1594)
▼4269番は聖武天皇が太上天皇になり、橘諸兄の家を訪問したときの歌。これまでは外から見るだけだったが、宴会を開いて内から眺めたときの感想の歌。
4270番は、諸兄が太上天皇の訪問を喜ぶ歌。
4271番は、宴会に同席していた藤原八束が諸兄と同じく太上天皇の訪問を喜ぶ歌。
4272番は、家持の未奏の歌。前の歌で浜辺が出たので、家持は里全体まで広げたようだ。
十一月の八日に、左大臣橘朝臣が宅に在して肆宴したまふ歌四首
よそのみに見ればありしを今日見ては 年に忘れず思ほえむかも 万4269
右の一首は太上天皇の御歌。
*外で見かけるだけだったのとちがい、今日、このようにして見たことでと毎年忘れずに思い出すであろう。
葎延ひ賤しきやども大君の 座さむと知らば玉敷かましを 万4270
右の一首は左大臣橘卿。
*むさくるしい我が家ですが、大君がいらっしゃると分かっていましたら玉石を敷いておりましたのに。
松蔭の清き浜辺に玉敷かば 君來まさむか清き浜辺に 万4271
右の一首は右大弁藤原八束朝臣。
*この庭の松の蔭にある清らかな浜辺に玉を敷いておきましたら、大君はまたおいでくださるでしょうかこの清らかな浜辺に。
天地に足らはし照りて我が大君 敷きませばかも楽しき小里 万4272
右の一首は少納言大伴宿禰家持 未奏
*天地のすみずみまで照らしておられる我が大君がいらっしゃれば里全体が楽しいものとなります。
【似顔絵サロン】聖武天皇 しょうむてんのう 701 - 756 第45代天皇。在位:724 - 749年父親は文武天皇、母親は藤原不比等の娘・宮子。
橘 諸兄 たちばな の もろえ 684 - 757 奈良時代の皇族・公卿。吉備真備と玄昉が政治を補佐。
藤原 真楯/八束 ふじわら の またて/やつか 715 - 766 奈良時代の公卿。藤原北家の祖・藤原房前の三男。山上憶良と交流。
〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集四』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=19
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