万葉集巻第十九4279-4281番歌(能登川の後には逢はむ)~アルケーを知りたい(1597)

▼今回は送別会の歌。
4279番は「悲しくもあるか」、4280番は「斎ひて待たむ」、4281番は「息の緒に思ふ」が効いている。これらのフレーズが出て来る気持ちの持ち方は今でもマネできそう。

 二十七日に、林王が宅にして、但馬の按察使橘奈良麻呂朝臣を餞する宴の歌三首
能登川の後には逢はむしましくも 別るといへば悲しくもあるか 万4279
 右の一首は治部卿船王
*能登川ののと=のちにまた会いましょう。しばらくの間でもお別れと言ってしまうと悲し過ぎるので。

立ち別れ君がいまさば磯城島の 人は我れじく斎ひて待たむ 万4280
 右の一首は右京少進大伴宿禰黒麻呂
*ここでお別れして貴方様が行ってしまいましたら、磯城島の人は我と同じように謹んでお待ちします。

白雪の降り敷く山を越え行かむ 君をぞもとな息の緒に思ふ 万4281
 右大臣、尾を換へて「息の緒にする」と云ふ。
しかれども、なほし喩へて、「前のごとく誦め」と曰ふ。
右の一首は少納言大伴宿禰家持。
*白雪が降り積もっている山を越えて行く貴方様。息をこらして思っております。

【似顔絵サロン】林王 はやしの おおきみ ? - ? 奈良時代の皇族。天平18年、元正天皇の雪の宴に参じ、藤原豊成・巨勢奈弖麻呂・大伴牛養ら17名と共に歌を作り天皇に上奏するも、遺漏したため記録されず。















橘 奈良麻呂 たちばな の ならまろ 721 - 757 奈良時代の公卿。橘諸兄の子。橘奈良麻呂の乱の後、獄死。奥山の真木の葉しのぎ降る雪のふりはますとも地に落ちめやも 万1010















船王 ふねおう/ふねのおおきみ ? - ? 奈良時代の皇族。舎人親王の子。757年、橘奈良麻呂の乱では、百済王敬福とともに謀反者を拷問、道祖王・黄文王・大伴古麻呂らが死亡。764年、藤原仲麻呂の乱では加担しなかったものの隠岐国へ流罪。眉のごと雲居に見ゆる阿波の山かけて漕ぐ船泊知らずも 万998















大伴 黒麻呂 おほとも の くろまろ ? - ? 奈良時代の官吏。















〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集四』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=19

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