万葉集巻第十九4282-4284番歌(新しき年の初めに思ふどち)~アルケーを知りたい(1598)
▼今回は753年の正月に仲間が集って詠んだ歌三首。4282番の作者、石上宅嗣は729年の生まれなので、24歳。4283番の茨田王の年齢は不詳。4284番で、新年にこうやって親しい仲間が集まるのは楽しいねと詠った道祖王は36歳。集まって歌を詠み、それが残る。家持が万葉集巻19に収録した。現代に至る。ありがたや。
五年の正月の四日に、治部少輔石上朝臣宅嗣が家にして宴する歌三首
言繁み相問はなくに梅の花 雪にしをれてうつろはむかも 万4282
右の一首は主人石上朝臣宅嗣。
*人の口がうるさいから訪問を控えていたが、その間に梅の花が雪で萎れて時期が過ぎるのではないかと気が気でない。
梅の花咲けるがなかにふふめるは 恋か隠れる雪を待つとか 万4283
右の一首は中務大輔茨田王。
*梅の花の中にまだつぼみがいる。これは恋を待っているのでしょうか、雪を待っているのでしょうか。
新しき年の初めに思ふどち い群れて居れば嬉しくもあるか 万4284
右の一首は大膳大夫道祖王。
*新年の初めに気が合う者が集まるのは嬉しいことですな。
【似顔絵サロン】石上 宅嗣 いそのかみ の やかつぐ 729 - 781 奈良時代後期の公卿・文人。石上麻呂の孫。経書・歴史書、作文を好んだ。草書・隷書も巧みで淡海三船と並ぶ文人の筆頭。日本最初の図書館「芸亭(うんてい)」を開設。
茨田王 まむたのおほきみ ? - ? 奈良時代の官吏。
道祖王 ふなどのおおきみ 717 - 757 天武天皇の孫。新田部親王の子。孝謙天皇の皇太子となるも素行不良を理由に廃太子。日本史上で初のこと。橘奈良麻呂の乱に連座、麻度比(まどひ=惑い者の意)と改名させられ拷問で獄死。
〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集四』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=19
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