万葉集巻第二十4302-4305番歌(山吹は撫でつつ生ほさむ)~アルケーを知りたい(1605)

▼今回は、山吹やホトトギスを介して人の情を伝える歌四首。4302番は来客の喜びを置始長谷が詠った作品で、4303番は家持によるその返し。4304番は別の日に別の場面で家持が橘卿に捧げた歌。4305番は、誰かに説明しているのか、はたまた独り言か分からないけど、視線を山に向けてホトトギスを詠う家持お得意の作。

 三月の十九日に、家持が庄の門の槻の樹の下にして宴飲する歌二首
山吹は撫でつつ生ほさむありつつも 君來ましつつかざしたりけり 万4302
 右の一首は置始連長谷
*わが家の山吹を撫でるように大切に育てましょう。貴方様がおいでになってかざしてくれるのですから。

我が背子がやどの山吹咲きてあれば やまず通はむいや年のはに 万4303
 右の一首は、長谷、花を攀ぢ壺を堤りて到来す。
これによりて、大伴宿禰家持この歌を作りて和ふ。
*私の親しい友人の家で山吹が咲きました。これから毎年欠かすことなく通いますよ。

 同じき月の二十五日に、左大臣橘卿、山田御母が宅にして宴する歌一首
山吹の花の盛りにかくのごと 君を見まくは千年にもがも 万4304
 右の一首は、少納言大伴宿禰家持、時の花を嘱て作る。
ただし、いまだ出ださぬ時に、大臣宴を罷めて、挙げ誦はなくのみ。
*山吹の花の盛りのときにこのように貴方様とお目にかかれる機会は、これからもずっと続いて欲しいです。

 霍公鳥を詠む歌一首
木の暗の茂き峰の上をほととぎす 鳴きて越ゆなり今し来らしも 万4305
 右の一首は、四月に大伴宿禰家持作る。
*木が茂って暗くなっている峰の上をホトトギスが鳴きながら越えています。もうすぐここにやって来るでしょう。

【似顔絵サロン】置始 長谷 おきそめ の はつせ ? - ? 飛鳥時代の歌人。629年から672年にかけての代表的歌人。 
















〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集四』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=20

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